大石達也氏 西武球団スタッフとして奮闘の日々 想定外にも適応 米国流「データ指導」生かす
2020年04月15日 09:00
野球
メッツ傘下1Aでのコーチング研修のため2月23日に出発。フロリダ州ポートセントルーシーのキャンプ地に到着した大石氏に、想定外の指令が下った。
「○○と△△が投球するからそれを見て今日から思ったことを言ってくれ」
コーチに付いて研修すると思っていたら、初日からコーチ役に。しかも、その時点ではルーキーリーグ、1~3Aの所属に分かれておらず、投手だけで約90人、1グループ20人以上の大所帯だ。
「年齢は18~25歳。名前を必死に覚えたが、ブルペン投球は30球5分。バンバン投げて、すぐ終わり。2、3日は何も話せず、コーチ陣に“ちゃんとやってくれ”と言われた」
ダメ出しを受けながらも、培った知識をフル活用して若者たちの特徴や欠点を見極めた。次第に慣れ、ボディーランゲージも含め対話も可能に。「通訳がいて会話も何とかなった。多くの投手は投げ方がめちゃくちゃ。中南米の子の渡米理由は“投手はもうかるから”だったりする。センスだけで剛速球。日本的指導がはまる子もいた」と回想した。
例えば、投球時に軸足の膝が割れ、つま先より前に出てしまう投手。股関節に力が入らず体重移動が窮屈になる。大石氏は、膝を出さず股関節に力を入れるよう伝えた。聞き流す選手もいれば、興味を持ち耳を傾けてくれる選手もいた。連日、練習後にコーチ陣が集まってミーティング。「間違っていても指導内容を報告しないといけない」。付いていこうと必死だった。
落ち着くと、全体の動きも見えるようになった。「驚いたのは指導外のコーチの動き。指導法をデータで全て分析する。特徴を生かす根拠も分析する。そして全員で共有する。日本でも同じ作業はあるが量が違う。(西武の)3軍でも生かせる作業だと思った」。自身の指導は「日本の中学生レベルのものもあった」という丁寧さを貫いた一方、大集団を効率良く育成する米国流に感銘を受けた。
研修期間はシーズンを通しての予定だったが、コロナ禍により急きょ終了。「急にMLBのオープン戦が中止になった。街の雰囲気は普通だったけど、3月13日に球場も閉鎖。やることがなくなり、関係者に帰国を勧められた」と複雑な表情で話した。3月17日に帰国。西武で3軍と育成選手の指導に戻り、研修内容を報告すると、早速生かすよう指示を受けた。
「データを取り入れる勉強をして、知識を現場に落としてくれ、と。3軍でも生きるデータの活用法をこれからつくっていきたい」
指導者としての船出は想定外だらけだったが「今年はもう機会はないけど、また行きたい」と前を向く。視線の先には、目指すべきコーチ像がくっきり見えているようだった。(大木 穂高)
◆大石 達也(おおいし・たつや)1988年(昭63)10月10日生まれ、福岡県太宰府市出身の31歳。福岡大大濠から早大に進学し、最速155キロをマークするなど抑えとして活躍。10年ドラフトでは、同じ早大から斎藤佑樹(日本ハム)、福井優也(広島→現楽天)との3人がドラフト1位指名された。9年間通算で132試合に登板し5勝6敗8セーブ、防御率3・64。右投げ左打ち。
《米国でコーチ留学、研修経験のある主な選手》
☆巨人 02年にヤンキースと業務提携を締結以降、岡崎郁氏(現ジャイアンツアカデミー校長)、後藤孝志氏(現野手総合コーチ)、高田誠氏(現ファームディレクター)がヤ軍傘下マイナーでコーチ留学。
☆日本ハム 白井一幸氏(現野球解説者)が98年にヤ軍傘下マイナーでコーチ研修。02年に遠藤良平氏(現GM補佐)がダイヤモンドバックスに研修留学し、15年に金子誠氏(現野手総合コーチ)、16年に中嶋聡氏(現オリックス2軍監督)がパドレスに、矢野謙次氏(現外野守備兼打撃補佐コーチ)は19年にレンジャーズにコーチ留学。
☆広島 元監督の野村謙二郎氏(現本紙評論家)が06~08年に3年連続でロイヤルズのキャンプに臨時コーチとして参加。15年にはレッドソックスのキャンプにアシスタントとして参加。
☆ヤクルト 荒木大輔氏(現日本ハム2軍監督兼投手コーチ)が96年の現役引退後に野球解説者を経て、インディアンス傘下マイナーにコーチ留学。
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