大石達也氏 西武球団スタッフとして奮闘の日々 想定外にも適応 米国流「データ指導」生かす

2020年04月15日 09:00

野球

大石達也氏 西武球団スタッフとして奮闘の日々 想定外にも適応 米国流「データ指導」生かす
球団ではファーム・育成グループスタッフとして活動する西武・大石氏 Photo By スポニチ
 【選手→球団スタッフ 第2の人生 】 昨季限りで現役を引退し、球団内で第二の人生を歩み始めた元選手たちも、新型コロナウイルス感染拡大の影響を少なからず受けながら奮闘している。西武のファーム・育成グループ付スタッフに就任した大石達也氏(31)、DeNAの球団職員として営業部に配属された中後悠平氏(30)の近況を追った。
 大石氏は10年ドラフトで6球団が競合した最速155キロ右腕。プロ9年間で期待通りの成績は残せなかったが自らの経験を糧に、昨年11月から後進指導への道へ踏み出した。今月3日から自宅待機を余儀なくされている中で「短い期間でも間違いなくいい経験になった」と大きな財産として振り返るのが、3週間の渡米だ。

 メッツ傘下1Aでのコーチング研修のため2月23日に出発。フロリダ州ポートセントルーシーのキャンプ地に到着した大石氏に、想定外の指令が下った。

 「○○と△△が投球するからそれを見て今日から思ったことを言ってくれ」

 コーチに付いて研修すると思っていたら、初日からコーチ役に。しかも、その時点ではルーキーリーグ、1~3Aの所属に分かれておらず、投手だけで約90人、1グループ20人以上の大所帯だ。

 「年齢は18~25歳。名前を必死に覚えたが、ブルペン投球は30球5分。バンバン投げて、すぐ終わり。2、3日は何も話せず、コーチ陣に“ちゃんとやってくれ”と言われた」

 ダメ出しを受けながらも、培った知識をフル活用して若者たちの特徴や欠点を見極めた。次第に慣れ、ボディーランゲージも含め対話も可能に。「通訳がいて会話も何とかなった。多くの投手は投げ方がめちゃくちゃ。中南米の子の渡米理由は“投手はもうかるから”だったりする。センスだけで剛速球。日本的指導がはまる子もいた」と回想した。

 例えば、投球時に軸足の膝が割れ、つま先より前に出てしまう投手。股関節に力が入らず体重移動が窮屈になる。大石氏は、膝を出さず股関節に力を入れるよう伝えた。聞き流す選手もいれば、興味を持ち耳を傾けてくれる選手もいた。連日、練習後にコーチ陣が集まってミーティング。「間違っていても指導内容を報告しないといけない」。付いていこうと必死だった。

 落ち着くと、全体の動きも見えるようになった。「驚いたのは指導外のコーチの動き。指導法をデータで全て分析する。特徴を生かす根拠も分析する。そして全員で共有する。日本でも同じ作業はあるが量が違う。(西武の)3軍でも生かせる作業だと思った」。自身の指導は「日本の中学生レベルのものもあった」という丁寧さを貫いた一方、大集団を効率良く育成する米国流に感銘を受けた。

 研修期間はシーズンを通しての予定だったが、コロナ禍により急きょ終了。「急にMLBのオープン戦が中止になった。街の雰囲気は普通だったけど、3月13日に球場も閉鎖。やることがなくなり、関係者に帰国を勧められた」と複雑な表情で話した。3月17日に帰国。西武で3軍と育成選手の指導に戻り、研修内容を報告すると、早速生かすよう指示を受けた。

 「データを取り入れる勉強をして、知識を現場に落としてくれ、と。3軍でも生きるデータの活用法をこれからつくっていきたい」

 指導者としての船出は想定外だらけだったが「今年はもう機会はないけど、また行きたい」と前を向く。視線の先には、目指すべきコーチ像がくっきり見えているようだった。(大木 穂高)

 ◆大石 達也(おおいし・たつや)1988年(昭63)10月10日生まれ、福岡県太宰府市出身の31歳。福岡大大濠から早大に進学し、最速155キロをマークするなど抑えとして活躍。10年ドラフトでは、同じ早大から斎藤佑樹(日本ハム)、福井優也(広島→現楽天)との3人がドラフト1位指名された。9年間通算で132試合に登板し5勝6敗8セーブ、防御率3・64。右投げ左打ち。

《米国でコーチ留学、研修経験のある主な選手》
 ☆巨人 02年にヤンキースと業務提携を締結以降、岡崎郁氏(現ジャイアンツアカデミー校長)、後藤孝志氏(現野手総合コーチ)、高田誠氏(現ファームディレクター)がヤ軍傘下マイナーでコーチ留学。

 ☆日本ハム 白井一幸氏(現野球解説者)が98年にヤ軍傘下マイナーでコーチ研修。02年に遠藤良平氏(現GM補佐)がダイヤモンドバックスに研修留学し、15年に金子誠氏(現野手総合コーチ)、16年に中嶋聡氏(現オリックス2軍監督)がパドレスに、矢野謙次氏(現外野守備兼打撃補佐コーチ)は19年にレンジャーズにコーチ留学。

 ☆広島 元監督の野村謙二郎氏(現本紙評論家)が06~08年に3年連続でロイヤルズのキャンプに臨時コーチとして参加。15年にはレッドソックスのキャンプにアシスタントとして参加。

 ☆ヤクルト 荒木大輔氏(現日本ハム2軍監督兼投手コーチ)が96年の現役引退後に野球解説者を経て、インディアンス傘下マイナーにコーチ留学。

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