【藤川球児物語(29)】優勝あと一歩届かず 怒とうの快進撃もついに限界

2020年12月11日 10:00

野球

【藤川球児物語(29)】優勝あと一歩届かず 怒とうの快進撃もついに限界
07年9月14日、中日・ウッズに勝ち越しの2点打を浴びた阪神・藤川
 10連投10連勝の歩みを改めて振り返ってみる。07年8月30日の広島戦(甲子園)から9月9日の巨人戦(東京ドーム)までの10試合で10連勝。1点差試合が6試合、2点差が2試合。藤川球児の存在があってこその快進撃だった。
 「どれも紙一重やったな」と監督・岡田彰布も認めた激闘。このシーズンは5月9日に単独最下位に転落し6月には首位と12ゲーム差をつけられていた。終盤9月のミラクル連勝で首位浮上。この勢いでゴールに走るものと、藤川ら選手も、ファンも確信していた。

 だが、原辰徳率いる巨人、落合博満が率いる中日はともにしぶとかった。ペナントの行方は9月14日からの甲子園での中日、巨人6連戦にかかっていた。藤川が忘れることがないのは、6連戦の初戦・中日戦のマウンドだった。

 試合は二転三転しながら5―5で9回に突入した。藤川の登板に甲子園のボルテージも上がる。代打・立浪和義と荒木雅博に安打を許し2死二、三塁でタイロン・ウッズを打席に迎えた。矢野輝弘がマウンドに向かう。一塁は空いていた。だが、歩かせる選択肢はバッテリーにはなかった。岡田も「勝負よ。誰が歩かせるか。逃げて逃げ切れる時やない」と藤川を信じていた。

 同年7月26日の対戦でも8回2死満塁でウッズを空振り三振に仕留めていた。05年8月から打たれていない。6球でフルカウントに持ち込んだが、相手も4球連続ファウルで粘る。オール直球勝負の11球目。152キロは伸ばしたグラブをかすめ、中前にはじき返された。「やられたね…。悔い? ないことはない。矢野さんのサインに首を振ったから。球種じゃなくコースで。でもウッズで勝負できると思ったから」

 中日、巨人6連戦は3勝3敗で乗り切り、首位を守った。しかし、これが限界だった。阪神はここから8連敗を喫し、失速。藤川も9月24、25日の横浜戦(横浜)でつかまり2試合連続で敗戦投手となった。勝負の厳しさ、優勝の難しさを痛感したシーズンだった。 =敬称略=

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