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【内田雅也の追球】すべて夢だったと気づく時 忘れてはならない敗戦 阪神の春夏秋冬

2021年11月08日 08:00

野球

【内田雅也の追球】すべて夢だったと気づく時 忘れてはならない敗戦 阪神の春夏秋冬
<神・巨>4回無死一塁、代打・糸井は二飛に倒れる(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【クライマックスシリーズ(CS)セ・リーグ ファーストステージ第2戦   阪神2ー4巨人 ( 2021年11月7日    甲子園 )】 9回裏2死から走者が出て、大山悠輔には同点2ランが頭をよぎった。四球で歩き、メル・ロハスがフルカウントとなると、外野を抜いての同点を思い描いた。
 三振でゲームセット。すべては夢だったと気づく。阪神が春先から描いてきた日本一という夢は、はかなく消えた。

 もう明日から試合はない。クライマックスシリーズ(CS)は非情な制度だ。貯金21の2位が借金のある3位に敗れる。

 「プレーオフで敗れるということは――」と元大リーガーで引退後は人気キャスターとなったティム・マッカーバーが語っている。ポストシーズンゲームでの敗戦は辛いものだ。「最高の舞台(ワールドシリーズ)に立てないことを意味する。しかしね、それも感謝祭までには忘れるさ」。感謝祭は11月第4木曜で今年は25日。辛い敗戦も時間がいやしてくれるという、慰めの言葉である。

 阪神も最高の舞台(日本シリーズ)に立てない。だが、忘れてはならない。脳裏に刻み、心に留め置く必要がある。

 ミスが失点につながった。先制直後の3回表、先頭打者の遊ゴロを中野拓夢が捕りこぼした。青柳晃洋の本塁送球も山なりで併殺を奪えなかった。結果3失点と逆転を許した。8回表も先頭打者の三ゴロを大山が捕りきれない。痛い追加点を許した。4失点はすべて非自責点だった。

 打線も11安打、5四球ながら2点止まり。1併殺13残塁と14人の走者が立ち往生した。「あと一打」を欠く決定力不足は解消されないままだ。シーズンでの課題がそのまま出ての敗戦だった。

 采配で綾があったとすれば4回裏無死一塁での代打・糸井嘉男か。強攻策で二飛凡退したのだが、他の代打で送りバントしていれば、後の中野の右前打で同点だった。

 バントを選択しなかったのは前日のヒットエンドラン失敗と共通している。それが信念ならば貫けば良い。結果は受けとめるしかない。

 この日は「立冬」。東京五輪での中断があり、長い1年だった。暦の上で季節は知らぬ間に冬を迎えていた。

 春から突っ走ったが、夏から秋と季節が進むにつれ、大山も梅野隆太郎も佐藤輝明も……出番が減っていった。監督・矢野燿大も辛かったことだろう。皆が心に傷を負っていた。

 選手も監督も、皆が力不足だったのだ。今はまず心と体を休めたい。そして、頭に刻んだ悔恨を力に換えるのである。 =敬称略= (編集委員)

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