夢を見て、理想を語る――60年ぶりの「壬寅」で阪神優勝を思う
2021年12月29日 08:00
野球
堂々と優勝を口にできるのは幸せなことかもしれない。球団も機は熟したとみているわけだ。
もちろん道のりは険しいだろうが、歩んでいくのであれば、楽しく、夢と希望を持ちながら進んでいきたい。
1962(昭和37)、64年と阪神をリーグ優勝に導いた監督・藤本定義は選手に夢と希望を持たせようと、常に前向きな言葉を使っていた。遺族から提供を受けた大量のメモや日誌、資料のなかには<指導方針>として<選手に常に希望、熱意、勇気、意欲を持たせよ><希望を持たせよ>と記されていた。今月15~19日付のスポニチ本紙(大阪本社発行版)で連載した『名将・藤本定義の研究』で触れた。
そして実際に藤本は優勝を夢に見ていた。シーズン途中の監督就任で4位となった61年の年の瀬12月28日、担当記者を招いて開いた忘年会で「昨日、面白い夢を見た」と打ち明けている。月刊『ベースボールマガジン』(62年2月1日発行)にある。「甲子園でうちと東映が選手権を争っていたんだ」
夢も語ってみるものだ。これが正夢となった。阪神は62年、2リーグ分立後初優勝を果たし、東映(現日本ハム)と日本シリーズを戦った。
この62年は寅(とら)年だった。十干十二支で言えば「壬寅(みずのえ・とら)」だった。そして来年2022年は60年ぶりにこの壬寅が巡ってくる。ファンであれば、阪神の優勝を思わずにはいられない。
ベテランの策士で、松山出身から「伊予の古だぬき」と呼ばれた藤本と、今の監督・矢野燿大とは特に共通点はないように映る。だが、「夢を語る」「希望を与える」という点においては実に似ている。
矢野が作家・ひすいこたろう、メンタルトレーナー・大嶋啓介とともに著した『昨日の自分に負けない美学』(フォレスト出版)が今月に出た。矢野は<監督になってから、夢と理想ばかり語ってきました>と書いている。「何言ってるの?」「そんなんで勝てるの?」「プロの世界はそんなに甘くないで」という声に負けずに言い続けてきた。
今ではチーム内で矢野の言葉を冷笑する者などいないだろう。夢を見て、理想を語る空気がチーム内にある。それは、60年前に藤本が目指した夢と希望の持てる雰囲気ではないか。
矢野は書いている。<僕は理想を描きたい。その理想のために、今日という1日を使いたい>。
いいではないか。夢を見て、理想を語りながら一日一日を過ごしたい。そして、壬寅の新年を迎えたいと思っている。 =敬称略= (編集委員)
◆内田 雅也(うちた・まさや) 1963(昭和38)年2月生まれ。桐蔭高―慶大から85年4月入社。アマ野球、近鉄、阪神などを担当。デスク、ニューヨーク支局を経て2003年編集委員(現職)。大阪本社発行紙面で主に阪神を書くコラム『内田雅也の追球』は来季16シーズン目を迎える。
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