×

センバツ 異例の誤審謝罪を元NPB審判員記者が解説 「より正しい方に」ミスした後のベストな処置

2022年03月20日 11:18

野球

センバツ 異例の誤審謝罪を元NPB審判員記者が解説 「より正しい方に」ミスした後のベストな処置
<広陵・敦賀気比>4回、判定の誤りを認め場内に説明する尾崎球審(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【第94回選抜高校野球大会第2日第1試合・1回戦   広陵―敦賀気比 ( 2022年3月20日    甲子園 )】 第1試合の広陵―敦賀気比戦で審判員による判定変更があった。11年から16年までNPB審判員を務めた記者が解説する。
 2―0で迎えた4回、広陵の攻撃。無死一塁から7番・大山が一塁線に送りバント。イレギュラーバウンドした打球はファウル地域からフェア地域に転がった。一塁へ送球され「送りバント成功」と思われたが、一、二塁間で止まっていた一塁走者がタッチされ、ダブルプレーとなった。

 「アウト」と宣告された一塁走者は両手を挙げて「ファウル」のゼスチャーで判定への不服を示した。一度は一塁側の広陵ベンチに戻るも、球審へ「判定の確認」を求めると、4審判員での協議が始まった。

 協議の結果、一塁走者のアウトは取り消され、1死二塁で再開となった。場内への説明は以下の通り。

 「打球がイレギュラーバウンドでフェア地域に転がりまして、フェアと判定をいたしました。しかしながら、二塁の塁審がそれを誤ってファウルのゼスチャーをしてですね、ランナーを止めてしまいました。守備は取った打球を、打者走者を一塁でアウトにしようとする守備行為でしたので、私達の間違いでして、止めたランナーに対する守備行為がなかったので、二塁へ進めて、1死二塁で再開します。大変、申し訳ありません」

 この処置は正しいのか。結論から言うと、ベストな判断だったと記者は思う。理由は2つある。

 1つ目は規則に基づいた処置だったからだ。公認野球規則8.01(c)には「審判員は、本規則に明確に規定されていない事項に関しては、自己の裁量に基づいて、裁定を下す権能が与えられている」と記載がある。いくら分厚い規則書でも「審判員が誤ってファウルのゼスチャーをした場合」までは記載されていない。審判員にとって判定変更は勇気のいることだが、誤りを即座に認めて、より正しい処置を導き出すために協議した。

 2つ目は「1死二塁」にした点だ。晴れ舞台の甲子園大会。判定を変更する事態になり、通常の精神状態ではなかったと思う。だが「もし、プレーの妨げになった行為がなかったら、どうなっていたか」という視点を持って協議が行われ「1死二塁」の結論に導いた。「打者走者を一塁でアウトにしようとする守備行為でした」という説明は説得力がある。1死一塁や、ファウルに変更、または最初の判定のまま併殺と選択肢があった中でベストな判断だった。

 「大変申し訳ありません」という言葉があったが、ミスをした後にベストな処置をした4審判員に拍手を送りたい。「より正しい方に」と懸命な姿が印象的だった。(柳内 遼平)

おすすめテーマ

2022年03月20日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム