【内田雅也の追球】「非自責点」に映る青柳の悔恨 しかめっ面に見た大エース・杉浦と同じ思い

2022年09月14日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「非自責点」に映る青柳の悔恨 しかめっ面に見た大エース・杉浦と同じ思い
<神・広>6回1死二、三塁、羽月の2点適時二塁打を浴び、ぼう然とする青柳(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神3―6広島 ( 2022年9月13日    甲子園 )】 背走する近本光司が追いつかず、打球が中堅フェンス下部を直撃すると、阪神・青柳晃洋の顔がゆがんだ。4回表2死二塁、磯村嘉孝に浴びた適時二塁打である。
 0―0で迎えたこの回、直前の1死一、三塁で二ゴロを打たせたが、4―6―3の転送で一塁送球がそれた。打球が緩く一塁のタイミングはセーフ。併殺は無理だったが、遊撃手・中野拓夢の悪送球(失策)で打者走者が二塁に進んだ。

 「味方がミスした後こそ抑えるのがエース」と杉浦忠(故人)が本紙評論家だったころ、よく聞いた。南海(現ソフトバンク)の現役時代、青柳と同じ下手投げのエースだった。1959(昭和34)年には実に38勝4敗の驚異的な成績でリーグ優勝、日本一に導いた。「エラーの後を無失点で切り抜けると、今度は野手が打ってやろうとしてくれる。それが相互の信頼につながる」

 青柳も同じ思いだったろう。だからこそ、失策の後を締めたかった。しかめっ面に悔恨がにじみ出ていた。

 青柳は今季、失策がらみの失点が表れる非自責点が8点もある。大野雄大(中日)7点、西勇輝(阪神)4点を上回りセ・リーグ規定投回数到達投手のなかで最多だ。戸郷翔征(巨人)、小川泰弘(ヤクルト)はわずか1点しかない。もちろん失策の多少にもよるが、失策の後を踏ん張り切れていないとも言える=成績は12日現在=。この夜の4回表2失点のうち1点は非自責点である。

 6回表には失策ではないが味方守備のミス(犠打野選)の後に3失点を重ねた。

 また、青柳自身のミスもあった。4回表先頭、6回表無死二塁から与えた四球である。ともにその後、生還を許した。何度か書いたが、19世紀には四球は投手の失策として記録されていた。自分自身、そしてバックの野手のミスの後を踏ん張り切れなかった。野球は失敗のスポーツだ。大切なのはミスした後なのだ。

 クライマックスシリーズ(CS)進出を争う広島との直接対決。青柳は無念の6回5失点降板で、4敗目がついた。

 相手広島も8回1死からクローザー栗林良吏を投入、今季初めてイニングをまたぐ起用をしてきた。どこも必死なのだ。

 広島、巨人とも1ゲーム差で残り9試合。まだまだ青柳に名誉挽回の機会はある。=敬称略=(編集委員)

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