【内田雅也の追球】長所見せ、教訓得た。 難敵・今永に球数投げさせ消耗戦での攻略に手応え

2023年08月30日 08:00

野球

【内田雅也の追球】長所見せ、教訓得た。 難敵・今永に球数投げさせ消耗戦での攻略に手応え
<神・D>6回、坂本は四球を選ぶ。投手今永(撮影・北條 貴史) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神2―3DeNA ( 2023年8月29日    甲子園 )】 敗戦後の阪神監督・岡田彰布は静かな番記者たちを見渡し「シュンとなって」と笑った。「そんなん、何とも思ってないのに。ほんまに何とも思ってないわ」
 2位・広島が勝ち、マジックナンバーが消えた。マジックはついたり消えたりするものなのだ。

 沈みきっていては幸運は逃げていき、勝利の女神もそっぽを向く。岡田は分かっていた。だから笑顔で会見場からクラブハウスまで歩いた。

 夏の長期ロードから帰り、7月30日以来、30日ぶりの甲子園球場での試合だった。甲子園は長旅での奮闘を慰労し、そして教訓を与えていた。順調すぎるほどに勝ってきたが、勝負の世界はそう簡単なものではない、と気を引き締めたのだ。

 9回表、岩崎優が今季初めて本塁打を、それも同点2ラン、決勝弾と2者連続で浴びた。むろん「まさか」だが勝負の世界に絶対はない。岩崎だって打たれもする。

 絶対はない。何も、この夜の試合だけに限らない。シーズンを通じても言えることだった。

 ただし、今季の進撃を支えてきた“らしさ”は示した。断トツでリーグ最多四球を得る打者陣の選球と粘り強さである。

 難敵のDeNA先発・今永昇太に初回に30球、5回で100球を投げさせた。岡田も「そうよ。オレもベンチで数えとったよ」と、消耗戦での攻略に手応えを得ていた。

 130球を超えた7回裏は1死二塁をつくったが、あと1本が出なかった。「今永もよく踏ん張ったよ。意地と言うのかな。大したもんよ」。相手をたたえるしかない。

 0―0均衡を破ったのは8回裏。2番手J・B・ウェンデルケンから坂本誠志郎が右前適時打。ヨハン・ミエセスも代打で初安打となる左前適時打で2点目を奪った。

 ヒーローになり損ねた坂本だが、他に2四球も選んでいる。セ・リーグ打者の「ボールゾーンスイング率」を低い順に並べると、(1)近本光司20・2%……(4)大山悠輔22・8%、(5)梅野隆太郎23・3%、(6)坂本誠志郎25・1%……(9)中野拓夢25・1%と、ベスト10に阪神勢が5人もいる=150打席以上。28日現在=。

 悪球に手を出さずに辛抱し、好球をたたく。春先から愚直なほど素直に徹底してきた姿勢は今も失っていない。甲子園もそんな長所を温かく見守っていた。=敬称略=(編集委員)

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