八重樫、世界最速負け 激闘王ぼうぜん…1回2分45秒TKO
2017年05月22日 05:30
格闘技
序盤でメリンドの左ボディーアッパーを食らい、「ボディーは強い。集中しよう」と警戒感を強めた直後だった。1分30秒、懐に飛び込んだところでテンプルに左フックを浴びてダウン。「最初のフックは覚えている。そこからはうろ覚え」。ダメージが残ったまま、左アッパーで追撃されて再びダウン。最後はきれいにワンツーを打ち抜かれた。終了のゴングを聞きながら「何ラウンドで倒されたかも分かってなかった」と試合を止めたフェリーをぼうぜんと見上げた。
昨年4月に左肩を痛めて、11月にメリンドが暫定王座に就いた。昨年末のサマートレック(タイ)とのV2戦ではまだ万全ではなかったが、完治した今回は肩周りの可動域を広げるトレーニングにも積極的に取り組んできた。調整に不安はなく「力のなさが出た。自分が弱かった」と認めるしかなかった。
「ずっと勝ってきた人間ではないので」と2年半ぶりの6敗目に絶望的なショックがあるわけではない。ただし淡々とした口調で「もういいかなと思えばスパッとやめるかも」とも言った。4度目の世界王座奪取は心を奮い立たせる材料となるのか。34歳のベテランは再起する理由もまたすぐには見つけられないようだった。
≪30年ぶり1秒更新≫八重樫がメリンドにライトフライ級の世界戦最短記録となる1回2分45秒TKO負け。従来は87年3月1日にWBA王者・柳明佑(韓国)がエドワルド・ツニョン(パナマ)に1回2分46秒でTKO勝ちしており、メリンドは30年ぶり1秒更新となった。
≪日本勢独占は一日天下≫ライトフライ級の主要4団体世界王者の「日本勢独占」はわずか1日で終わった。他団体の王者はWBAが田口良一(ワタナベ)、WBCが20日に王座を獲得した比嘉大吾(白井具志堅)、WBOが田中恒成(畑中)。
◆八重樫 東(やえがし・あきら)1983年(昭58)2月25日、岩手県北上市生まれの34歳。黒沢尻工―拓大。アマ70戦56勝(15KO・RSC)14敗。05年3月プロデビュー。06年4月、国内最短タイの5戦目で東洋太平洋ミニマム級王者。11年10月、WBA同級王者ポンサワン(タイ)に10回TKO勝ちし、2度目の挑戦で世界王者。13年4月、WBCフライ級王者・五十嵐俊幸(帝拳)に判定勝ちして2階級制覇。15年12月、IBFライトフライ級王者メンドサ(メキシコ)に判定勝ちして3階級制覇。身長1メートル59.5、リーチ1メートル64.5の右ボクサーファイター。