混沌とするミドル級――村田が“主役”となるために必要なこと

2018年10月20日 11:30

格闘技

混沌とするミドル級――村田が“主役”となるために必要なこと
計量をパスした村田(左)とブラントはともにファイティングポーズ(撮影・中出 健太郎) Photo By スポニチ
 村田諒太(帝拳)がWBA(世界ボクシング協会)王者の座にいるミドル級の情勢が混沌(こんとん)としてきた。今年5月まではゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)がWBAスーパー、WBC(世界ボクシング評議会)、IBF(国際ボクシング連盟)の3団体統一王者として君臨。だが、昨年9月に微妙な判定で引き分けたサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)との再戦決定が遅れるうちにIBF王座を剥奪され、今年9月の再戦ではカネロに判定でプロ初黒星を喫して無冠となった。「独自路線」だったWBO(世界ボクシング機構)王者ビリージョー・サンダース(英国)は禁止薬物に陽性反応を示し、王座を返上したばかりだ。
 現状ではゴロフキンを破り、WBAスーパーとWBCのベルト2つを保持するカネロがミドル級の頂点にいる。ゴロフキン戦は2試合とも負けていたとの批判も受けているが、対戦相手に関わらず1人で多額のファイトマネーを生み出せるスーパースターであることは間違いない。今年、米ボクシング界に進出した英DAZNが先日、カネロと11試合で計3億6500万ドル(約408億円)という、プロスポーツ史上最大の契約を結んだことがその証明だ。だが、カネロは12月にWBAスーパーミドル級王者ロッキー・フィールディング(英国)へ挑戦すると発表。3階級制覇を達成してもミドル級へ戻るとみられるが、ベルト2つを防衛する義務を果たすとは思えない。

 空位のWBO王座はデメトリアス・アンドラーデ(米国)とウォルター・カウトンドクワ(ナミビア)が、IBF王座はセルゲイ・デレビャンチェンコ(ウクライナ)とダニエル・ジェイコブス(米国)が、それぞれ王座決定戦を戦う。だが、誰が新王者となってもカネロやゴロフキンをしのぐような存在にはなりえず、もしカネロが王座を返上する事態になれば、WBA正規王者の村田、WBC暫定王者ジャモール・チャーロ(米国)も含め、ミドル級は「戦国時代」へと突入する。

 実は、村田がラスベガスで初めてメーンイベンターを務める20日(日本時間21日)のロブ・ブラント(米国)戦は、米国での注目度が高かったわけではない。米メディアではむしろ、同日のWBO王座決定戦の話題が取り上げられることが多かった。だが、村田―ブラント戦の公式会見に出席したボブ・アラム・プロモーターはWBO決定戦について「(会見場の)外にいる何人がその試合を知っていると思う?0%だ」と断言。自身がプロモートする村田を絶賛するのは当たり前として、興行上のライバルカードにも“主役”はいないことを強調した。

 だからこそ、ゴロフキンとのビッグマッチが計画される村田には、混沌の中から抜け出すチャンスが広がっている。ブラント相手の2度目の防衛戦は日本国内ではDAZN、米国ではスポーツ専門局ESPN+が生中継と、現在のボクシング放送における“二大巨頭”がついており、対戦相手にとって村田はビジネス的にも魅力ある選手。過去KO負けがない指名挑戦者に対し、米国でも注目を浴びるような勝ち方をするようならば、来年3、4月のゴロフキン戦実現へ向けて交渉が始まることは確実だ。アラム氏の「米国で試合をすることで、ムラタはスーパースターになろうとしている」との言葉は、かなりの割合で核心を突いている。(専門委員・中出 健太郎)

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