【村田諒太が引退宣言 】
【記者フリートーク】村田との会話は取材の楽しみの一つだ。プロモーターや興行上の関係で書けないネタが多い記者を「忖度(そんたく)ですか?」といじりながら、それこそ書けないような話を振って場を和ませる。この日も「みんな一生懸命やってるのに、俺の試合が最高試合なんてどうでもいいでしょう」と笑わせた。読書家で「闘う哲学者」と呼ばれるが、ボクシングの知識は圧倒的。軽量級に興味なしと言いながら、ぶっつけで過去の対戦データをすらすら口にするなど毎回勉強させられた。
ゴロフキン戦後に明かしたように、プロ生活を楽しめていなかったのは事実だ。自分の弱さと向き合い、克服する手段であったボクシングで、外部から重たすぎる期待を浴び、ビジネスも絡むリングで勝利を求められた。試合がない時期の練習で、ストレスフリーで笑いながら相手を殴っていたのが印象的だ。
引退後もさまざまな役割を求められるだろう。指導者よりも、広い人脈を生かせるプロモーター業などが適役と思われるが、個人的には村田が一番生き生きとしているボクシング解説を聞いていたい。一切の忖度なしで。(ボクシング担当・中出健太郎)