縦筋の通った中村蒼は役に真っ正直 平成生まれの「昭和顔」 “ケツ顎”がいぶし銀の演技のエッセンスに

2024年10月20日 05:00

芸能

縦筋の通った中村蒼は役に真っ正直 平成生まれの「昭和顔」 “ケツ顎”がいぶし銀の演技のエッセンスに
クールな表情を見せる中村蒼(撮影・松永 柊斗)
 【俺の顔】実直に内面を語る姿に人柄がにじむ。俳優の中村蒼(33)は14歳の時、イケメンを発掘するコンテストで優勝し華々しいデビューを飾ったが、その中身は質実剛健。「器用な役者になるな」など先輩から掛けられた金言を力に、自らの道を歩み続けている。(西村 綾乃)
 「小さい頃は色白で、もっと丸っこい感じだったんです」。寡黙な九州男児を地でいくが、幼少期についてほほ笑みながら口を開いた。

 「口元は母親で、輪郭は父親似。成長する中で、だんだんゴツゴツして、自分では残念な感じになったと思っています」と顔の変化を振り返った。

 りりしい眉、厚い唇などのパーツが目を引く。平成3年生まれだが「生まれてからずっと昭和顔と言われてきた」と苦笑い。「髪の毛を七三分けにしたら、ぐっと昭和感が増す」。その風貌は昭和を生きる人を描いた、NHK連続ドラマ「エール」や、同「らんまん」などの作品で輝きを放った。だが「役の印象が強くなりすぎると、それは弱みにもなる」。冷静な分析は、さまざまな役に挑戦する一因になった。

 2005年に「第18回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。15歳で寺山修司原作の舞台「田園に死す」で俳優デビューした。11年に出演したドラマ「花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイス~」では、王子様キャラクターを好演。一方、15年のドラマ「無痛~診える眼~」では、先天性無痛症で無毛症の青年を演じるため、髪と眉をそり落とす役者魂を見せた。「頭をそり上げたのは生まれて初めて。バリカンで髪をバサッといかれたときは、うわぁって思ったんですけど、外見をつくったおかげで役の世界に没入できた」

 アイドル、刑事に武将――。その人物を“生きる”ため「外見はプロの方の助けを借りて、中身は僕の経験を監督に伝えながら、イメージをつくっていく」。丁寧な役作りに定評がある。そして、中村の顔には忘れてはいけない特徴が、もう一つある。

 人さし指を顎の割れ目に当てると、「ケツ顎ですよね」とニヤリ。往年の英名優、ケーリー・グラントも持つ、顎に入った縦筋は子供の頃からあったという。ヒゲをそるときは「伸ばせば大丈夫」と顎を「ムッッ」と突き出して見せてくれた。30代に入り、リーダー的な役を任される機会が増えた。私生活では2児の父。男らしさの象徴でもある割れた顎はこれから、いぶし銀の演技のエッセンスになっていきそうだ。

 「こんなに自分のことを話すことはない」とはにかむ中村に、役者業について水を向けると、再び自問自答し始めた。共演した藤竜也(83)から「器用な役者にならないで」と掛けられた言葉は、原動力の一つ。「下手でも心に響くものを。悩みながら追求したい」と前を向いた。

 ≪映画「アイミタガイ」「男として分かる」憎めない恋人役≫20年に死去した佐々部清監督の思いを継いだ最新作「アイミタガイ」(監督草野翔吾、11月1日公開)に出演する。間が悪いけれど憎めない、主人公(黒木華)の恋人役を演じた。いまかよ!と突っ込みたくなる告白シーンも「男として分かる」と役の気持ちに寄り添う。企画は佐々部監督が温めていたもの。一人でロケ地を探すなど、地盤をつくった監督に「恥じないように」と気を引き締めて臨んだ。監督とは10年前、ホームレス役で主演した「東京難民」の撮影でもタッグを組んだ。「映画や役者に対して、深い愛情を持っていた」と優しさに触れ「お酒が強くて、カラオケでは、天地真理さんのヒット曲を歌ってくれた」と懐かしんだ。

 ◇中村 蒼(なかむら・あおい)1991年(平3)3月4日生まれ、福岡県出身の33歳。中学3年時にジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリ獲得。俳優デビュー後は、映画「沈黙の艦隊」などで堅実な演技を見せる。来年は12年ぶりにNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」に出演し、主人公の義理の兄役を務める。1メートル75。血液型A。

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