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【1970年8月】希望/聴かせる歌手”岸洋子 病と闘い続けながら歌ったシャンソンの名曲

2011年08月15日 06:00

芸能

 ★70年8月ランキング★
1 愛は傷つきやすく/ヒデとロザンナ
2 手紙/由紀さおり
3 希望/岸洋子
4 噂の女/内山田洋とクールファイブ
5 命預けます/藤圭子
6 波止場女のブルース/森進一
7 昨日のおんな/いしだあゆみ
8 経験/辺見マリ
9 圭子の夢は夜ひらく/藤圭子
10 今日でお別れ/菅原洋一
注目一度だけなら/野村将希
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【希望/岸洋子】

 “聴かせる歌手”岸洋子は病と闘い続けながら、名曲「希望」を歌い続けた。

 70年4月1日発売。「夜明けのうた」で日本レコード大賞の歌唱賞を受賞してから6年。物哀しいメロディーにもかかわらず、「希望という名の あなたを訪ねて…」の歌い出しはインパクトがあり、有線放送からジワジワ火が付き出し、夏になるとレコード売り上げが伸びた。シャンソンでありながら、特定のファンだけでなく、若者の心もとらえて大ヒット。レコード売り上げ51万枚を記録した。

 曲のヒットで仕事は次々と舞い込んだが、当時の岸は「仕事は1日1本」と決めていた。東京芸大大学院卒業後、オペラ歌手を目指していた若かりし頃、心臓を患って以来、体力には自信がなく、体も疲れやすかった。

 ただ、売れっ子歌手は引く手あまた。1日1本の仕事が2本になり、休みもままならなくなった9月末。岸はついに故郷山形県酒田市でのイベント会場で倒れた。入院し治療が施されたが、一時危篤状態に。回復したが、この年の紅白歌合戦出場はドクターストップがかかった。7年連続の出場が絶たれた岸の病名は膠原(こうげん)病。関節痛や筋力低下などを発症する難病で、歌手生命そのものを危うくするものだった。

 それでも曲のタイトルのごとく「希望」を失わず、岸は復活した。70年のレコード大賞では2度目の歌唱賞受賞。翌71年「希望」は春の選抜高校野球の開会式入場行進曲に選ばれ、途切れた紅白歌合戦に出場。多くのファンのまさに「希望」となった。

 以来22年、入退院と復帰を繰り返しながら歌い続けてきた。その姿は歌手仲間をして「人生を達観して生きている」「1曲を歌うことに対する魂の入れよう、真剣さは近寄り難いものがあった」とさえ言われた。

 92年12月11日、膠原病から感染症を併発し、腎臓を病み、それがもとで敗血症を起こし、57歳でその生涯を閉じた。死の1カ月前まで舞台に立ち、聴衆を魅了。「クリスマスのショーまではファンのために歌いたいの。死んでもいいから」と医師に懇願し続け、年明け早々に手術と決めた矢先の悲報だった。
 

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