【NHKマイルC】Vロード参る!雑草クエスト 花咲かす
2016年05月05日 05:30
競馬
雑草魂とも呼ぶべき腹の据わった走りだ。最大瞬間風速18メートルの突風。尾を左右に振られても、Wコースで平然とストライドを伸ばしていく。テスタメント(5歳1000万)、ブライトエンブレム(4歳オープン)の3馬身リードで迎えた直線。手綱を抑えたまま内から猛然と差を詰めた。マイラーを思わせる胴詰まりの馬体が伸縮する。1馬身差まで詰め寄ってゴール。そのままペースを緩めず1コーナーでは強じんな左後肢を踏ん張って2頭を抜き去った。
「単走で追い切ろうかとも思ったが、目標がいないと走る気にならない馬。2頭を前に置いて追った」と説明する小島茂師。「皐月賞から中2週でもダメージは残っていない。重心を沈めさせるように走らせて負荷をかけた。これで安心してレースを迎えられる」。笑みを浮かべると、つぶやくように語った。「馬は値段通りとは限らない」
億ション並みのサラブレッド売買も珍しくない時代にロードクエストの価格は約626万円。公営・岩手で安い賞金をこつこつ積み上げた母マツリダワルツが北海道・様似町で産み落とした。血統は地味でも、この安馬には春の嵐に動じない雑草魂がある。「夏型なのか、気温の上昇とともに毛ヅヤも馬体の張りも良くなってきた。右よりも左トモのほうが強いから(東京の)左回りコースは合う。2歳時に緩かったトモがギュッと締まって、マイラーっぽい体形になった」(同師)という。
皐月賞では14番枠からせかせて内ラチに寄せたためハミをかんだ。「今度はせかせずに、でんと構えて本来の直線勝負。逃げ切られたら仕方がない。それで届くかどうかです」。ノーステッキで最後方から4馬身突き抜けた昨年の新潟2歳Sの再現へ。雑草に咲くマイルの花。春の嵐が去った後には栄光の日差しが降り注ぐ。
◇サウスポー 東京、新潟、中京の左回りコースは左手前(左前肢と右後肢を軸にした走り)でコーナーを回り、直線で右手前(右前肢と左後肢を軸にした走り)に替わる。そのため左後肢が強い馬は直線のラストスパートで踏ん張りが利く。