【高松宮記念】メラグラーナ100点!左肩に刻まれた勝利の刻印
2017年03月22日 05:30
競馬
でも、このオーストラリア産馬に限って言えば、押印なしで個体をすぐに識別できます。非常にユニークな馬体。中距離ホースかと思わせる胴長の体形なのに、飛節は短距離仕様。曲飛と呼ばれる「く」の字形の折りの深い飛節です。こういう曲飛は回転の速いフットワークを生む。ダッシュが利いて、テンからスピードに乗れる。短距離で威力を発揮する飛節なのです。
キ甲(首と背中の境にある膨らみ)と肩、トモも特徴的です。いずれも岩のように隆起している。スプリンター資質を示す発達ぶり。一見、スラリと胴の長い中距離体形でも、各部位を見ると短距離型。こんなアンバランスさが押印なしでも個体を識別させてくれるのです。
顔に不釣り合いな大きな耳も特徴的。その左右の耳をしっかり立てて、目線と同じ方角にぴたりと向けている。警戒心が強い。サラブレッドにも賢愚がありますが、賢い馬だと識別できる耳です。G1を勝つには飛び抜けた身体能力と共に賢さも必要。メラグラーナはその両方を備えています。
左肩の謎めいた刻印はオーストラリアの生産者エミレーツパーク社のブランドマーク。体の隅々に刻まれているのは一流短距離ホースの証です。埋蔵金の代わりに混戦G1の行方を示す刻印かもしれません。(NHK解説者)
◆鈴木 康弘 1944年(昭19)4月19日、東京生まれの72歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93〜03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなどで27勝。
▽達眼メモ 馬の個体識別は毛色や白斑、旋毛(つむじ)など先天的な特徴により照合されてきたが、日本では07年以降の生産馬にマイクロチップ装着を義務化。固有のデータが書き込まれたICチップをたてがみの生え際下方に埋め込み、読み取り器で識別する。欧州でもマイクロチップが導入されているが、北米の一部では上唇裏側の入れ墨、オセアニアでは皮膚の凍結で白色毛を再生させる凍結烙印(押印)も用いる。