【ヴィクトリアM】ミッキークイーン100点!ゆとりあり穏やか
2017年05月10日 05:30
競馬
ミッキークイーン。その立ち姿は思わず息をのむほどたおやか。四肢に均等の負重をかけながら、ゆとりをもって立っています。穏やかな目つきと耳の立て方。リングバミも余裕をもってくわえている。尾は力みひとつなく、ごく自然に垂らしている。立ち姿は精神状態を投影するもの。よほど気持ちが充実しているのでしょう。馬名にふさわしい女王の姿です。
過去の立ち姿はどうだったのか。昨年のヴィクトリアマイル、前回のG1有馬記念時の写真と比較してみると…。別の馬を撮影したのかと疑いたくなるような格好です。いずれも後肢を必要以上に前へ踏み込むようにして立っている。そのため体が詰まって映ります。飛節の深い馬によく見られる立ち方ですが、ミッキークイーンの飛節は深くない。気持ちが不安定だったからでしょう。昨秋は顔立ちにも落ち着きがなかった。鋭すぎる目、周囲を警戒するように左右に開いた耳。今回は真っすぐに立てている。耳を見ただけでも、違いは歴然としています。
体つきは肩の筋肉が少し発達した程度。ほとんど変化はありません。それでも、昨年よりもはるかにバランス良く映るのはゆとりのある立ち方をしているからです。体調の不安がなくなったのか、競馬の怖さが吹っ切れたのか。立ち姿を一変させた心境までは分かりませんが、今の姿は新緑の多摩丘陵に根を下ろすウオッカ像にも見劣りしない。風薫る5月にふさわしいヒロインです。(NHK解説者)
◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日、東京生まれの73歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70〜72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93〜03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。