【毎日王冠】“瞬の”ソウル、3歳牝馬Vの快挙へ軽快12秒7
2017年10月05日 05:30
競馬
オークスよりも丸みを帯びた黒鹿毛がしなやかに弾む。Wコースで5馬身先行したシャドウチェイサー(障害未勝利)に内から楽な手応えで並びかけたところがゴール。ラスト1Fは12秒7の切れ味だ。右に行きたがる癖を封印するため右頬には夏の放牧時から着用してきたチークピーシーズ(頬当ての棒状馬具)。ウッドチップに真一文字の蹄跡を刻んだ。欧州G1・10戦全勝の父フランケル譲りのスピード、欧米G1・6勝の母スタセリタそっくりの脚長のストライド。16冠才女は嬉々(きき)としてゴールに飛び込んだ。
「相変わらず張り切っているな。走るのが大好きな頑張り屋さんらしい動きだ」。見届けた藤沢和師が口火を切る。「オークスよりひと回り大きくなって8キロぐらい体重が増えている。夢中になって走っていた春に比べて気持ちも随分穏やかになった。オークス(ゆったりと流れる競馬)を使った分だけ違うよね」。3歳秋を迎えての成長も口にした。
昨年のダービー馬マカヒキなど歴戦の牡馬勢と初の対戦となる。「簡単ではない。3歳馬にはきつい。まして牝馬では軽量53キロでもどのぐらい頑張れるか…」と険しい表情で続けた同師。「今回のレース次第では(天皇賞・秋ではなく)エリザベス女王杯になるかも」とも語ったが、挑む価値はある。グレード制導入の84年以降、毎日王冠に出走した3歳牝馬は同厩舎のスティンガー(4着)だけ。当時、手綱を取った岡部元騎手は「ハンドルの利きが全然違う」とソウルの操縦性の高さを強調した。
毎日王冠を勝てば通算7戦6勝3着1回。凱旋門賞で8戦7勝3着1回としたエネイブルに数字上は近づく。春から成長した16冠才女。そのレースぶりによっては中身も欧州の猛女に接近する。
≪グレード制後は3歳牝馬Vなし≫3歳牝馬はグレード制導入の84年以前に毎日王冠を2勝している。中山2600メートルで行われた55年にはサスケハナが、東京2500メートルを舞台にした56年にはフエアマンナが優勝。現行の東京1800メートル戦になった84年以降は一頭も勝っていない。