サクソン、英ダービー制覇ならず…ディープ産駒の怪物初黒星
2018年06月03日 05:30
競馬
欧州最大を誇るアイルランドの競走馬生産グループ「クールモア」が、ディープインパクトの血を求め、11年欧州最優秀2歳牝馬のメイビーをノーザンファームに送り込んだのは14年春。翌15年1月に誕生したのがサクソンだ。秋まで同ファームで過ごし、同年10月にアイルランドに帰国。名門オブライエン厩舎で調教を積まれ、昨年8月にデビューすると破竹の快進撃。4戦無敗で1冠目の英2000ギニーを制すると、欧州各ブックメーカーは単勝2倍前後のオッズで、ダービーの大本命に支持。その走りを、世界中の競馬ファン、関係者が注目したが、快挙は夢と消えた。
英ダービー6勝を誇る欧州屈指の名門ステーブルと、主戦契約を結ぶ同2勝ムーアの最強タッグで挑んだ一戦。優先騎乗が可能な多数の素質馬の中から、迷わずダービーの騎乗馬に指名したのがサクソンだった。前走の2000ギニーは米国遠征(ケンタッキーダービーで同厩舎メンデルスゾーンに騎乗)のため手綱を譲ったが、大一番の手綱は死守した。来日経験豊富な名手は、数多くのディープ産駒に騎乗し特長も把握。自信を持って臨んだ。だが、エプソムは馬蹄型で最後の直線までカーブが連続する特殊なレイアウトで、高低差が約40メートルもある過酷なコース。切れ味を身上とするディープ産駒には不向きな舞台だったかもしれない。
敗れはしたが、日本産馬として初めて英クラシック(2000ギニー)を制し、ダービーで1番人気に支持された事実が色あせたわけではない。今後も優秀な繁殖牝馬が次々と日本へ送り込まれるはずだ。サクソンを生産したノーザンファームの吉田勝己代表は「繁殖牝馬を所有しているわけではないので、欧州で言う厳密な意味での生産者ではないから」と、一連のフィーバーを冷静に見つめている。いずれは日本産の日本調教馬で…。そんな期待も抱かせた、価値ある敗戦だった。
▼ビュイック騎手 今日は道中で何度か“勝てる”と思った。距離も楽々とこなしてくれたね。英ダービーは7度目の騎乗だが、騎手生活最高の瞬間を迎えることができたよ。