松永幹師 ヘヴンリーで天皇賞・秋V 両陛下に馬上礼「一生忘れられない」
2019年04月25日 06:30
競馬
この日、手綱を取った松永幹夫騎手は朝から落ち着かなかったという。武豊、柴田善臣騎手とともに、両陛下を出迎える大役を任されていたからだ。
「朝からガチガチに緊張していました。そのことがあったから、かえってレースではリラックスできた」
松永幹師は当時を振り返る。ハーツクライ、ゼンノロブロイらG1馬8頭が顔をそろえる豪華メンバー。札幌記念で重賞2勝目を挙げたヘヴンリーロマンスだったが、「まさか勝てるとは…」が本音だった。
最内1番枠スタートから道中8番手に付けると直線は内ラチ沿いに進出。最後は上がり3F32秒7の剛脚を繰り出し先に抜けたダンスインザムード、追うゼンノロブロイの間を割って抜けた。師匠・山本正司調教師の管理馬。20年に及ぶ騎手人生最高の瞬間だった。
大波乱の結末に騒然とする場内。意表を突かれたのはファンだけではない。「ペリエに“一周回ってこい”と言われて、改めてウイニングランに気が付いた」(松永幹師)ほどだったのだ。
そして14年たった今でも語り継がれる馬上礼。騒然とした場内が一瞬で静寂を取り戻す。馬もその意味を理解するように脚を止め、静かに前を向く。ヘルメットを脱ぎ、両陛下に深々と頭を下げる姿は平成競馬の中で最も美しいシーンの一つに数えられる。
「いまだに思い出してもらえるし、声を掛けてもらえる。幸せなことです。僕にとっても一生忘れられない思い出。これから令和の時代にも思い出に残るような競馬ができれば」
平成の競馬史に名を刻んだ師は、そう新時代への意気込みを語った。