上原師の“忘れられない1頭”ノーブルグラス
2021年06月11日 05:30
競馬
96年、最後の札幌スプリントSを制したのはノーブルグラス。同馬は当時まだ開業3年目で39歳だった上原博之調教師が管理していた。騎乗していたのは安田富男元騎手で、これが彼にとってはJRA全10場での重賞制覇。当時としては史上初となる快挙だった。
そんなノーブルグラスは上原師にとって忘れられない1頭だった。94年3月に開業した同師。船出は厳しいもので、4カ月が過ぎた6月末になっても初勝利を挙げることができなかった。しかし、7月3日、札幌競馬場ダート1000メートルの未勝利戦で待望のその瞬間がやってきた。上原師がここに送り込んだ牝馬は短距離戦にもかかわらず2着を3馬身半も突き放し快勝するのだが、何を隠そうそれがノーブルグラスだった。
さらにそれから約1年後の95年7月。準オープンまで出世していたノーブルグラスは格上挑戦で札幌スプリントSに出走。すると9番人気の低評価を覆してこれを優勝する。これが上原師にとって初の重賞制覇となった。師は述懐する。
「当時まだ騎手だった小島太さんが乗っていました。“初めて母親を競馬場に招待したら重賞を勝てた”と凄く喜んでおられました」
小島太元騎手は翌春に鞭(むち)を置き調教師に転身したのだから、騎手としては最後の孝行だったのかもしれない。
こうして95、96年と札幌スプリントSを連覇した上原師だが、3年前の2018年にはセイウンコウセイで函館スプリントSも勝っている。きっと感慨深い勝利だったことだろう。
果たして今年はどんなスピード自慢が現れるのか。注目したい。(フリーライター)