【天皇賞・秋】コントレイル100点 早すぎる年内引退 さらなる進化を予感
2021年10月26日 05:30
競馬
成長のバロメーターともいえるキ甲(首と背中の間の膨らみ)は既に抜けています。3冠馬の成長物語を体現するようにタイトルを重ねるごとにトモの筋肉量を増やし、筋肉の質を高めながら進化の頂点に達した完熟の馬体。成長物語は古馬になって完結しました。それでも、この物語にはひょっとして続編があるのではないか。そう思わせるほど馬体に奥行きがあるのです。
G1の激闘を戦い抜いても体の柔らかさは若駒時代と変わりません。頭から蹄に至るまで全ての部位が無駄なく滑らかにリンクされている。飛び抜けた柔軟性と機能性。父ディープインパクトから受け継いだこの2つの長所がさらなる進化を予感させるのです。柔らかくて滑らかな体には老幼問わず成長を受け入れる余地が生まれる。それがサラブレッドの体の神秘性です。
大阪杯では道悪がこたえて3着に敗れました。敗戦のダメージは残っていないか。念入りにチェックしました。3歳時と変わらないみずみずしい張り、黒い光沢を放つ毛ヅヤ…。肉体的なダメージはどこにも残っていません。顔つきを見ると、目力が強く、耳も少し強めに立てながらハミをしっかりと受けています。適度に気持ちが入っている時のしぐさ。精神的なダメージもありません。
7カ月の休養明けになりますが、久々を感じさせないほどすっきりとシャープに仕上がっています。同じ休み明けでもひと絞りできるグランアレグリア、エフフォーリアとは対照的です。ラスト2戦に全力投球できる仕上がり。「もったいない」。惜しまれながら引退したアスリート列伝にも名を連ねる3冠馬です。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の77歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。