“大金星”から15年 田中勝の手綱さばき健在
2022年04月15日 05:30
競馬
対抗の2番人気に支持されたのがフサイチホウオー。こちらはデビューから直前の共同通信杯(G3)まで、重賞3つを含む4戦4勝。単勝は3・7倍だった。
3番人気のドリームジャーニーの単勝オッズは8・5倍だったから、いわゆる“一騎打ちムード”が漂っていた。
そんな中、私がスポーツニッポン紙上で本命としたのは7番人気のヴィクトリー(栗東・音無秀孝厩舎)。前々走のラジオNIKKEI杯2歳S(G3)ではフサイチホウオーに敗れたものの早め先頭からいったんは抜け出した。小回り中山なら逆転できると予想したのだ。
手前味噌になるが結果はこれがハマった。逃げたヴィクトリーは最後まで先頭を譲らず、単勝17・3倍のダークホースながら見事に戴冠したのだ。
レース後、管理する音無師は言った。
「“逃げるな”と指示を出したんだけど、結果、逃げ切りでした。でも“逃げて良い”と言っていたら、また違う結果になったと思うから競馬は難しいですね」
音無師の発言が事実なら、鞍上は指揮官の指示を無視したことになる。騎乗したのは田中勝春騎手。当時、この点を尋ねると、次のように答えた。
「はい。確かに“逃げないで”と言われていました」
それでもハナへ行った理由を続けて語った。
「馬のやる気が凄かったから、抑えてけんかするのも良くないと感じました。だから指示に反しても行った方が良いと判断したんです」
これが奏功したのだった。
それから15年。現在51歳の大ベテランとなった彼だが、先週も勝ち星を挙げた。それも序盤は行きたがる鞍下をなだめて2番手に抑えると、3角過ぎからは動かして、きっちりゴール前で先頭に立つ素晴らしい手綱さばき。まだまだ健在ぶりを見せているのはうれしい限りである。(フリーライター)