【追憶の皐月賞】雨中決戦の83年 ミスターシービー父子制覇達成で3冠へ第一歩
2023年04月12日 07:00
競馬
レースは、カツトップメーカーが逃げ、カツラギエースとニホンピロウイナーが続き、2枠3頭が先団を形成。ミスターシービーはその15馬身ほどは後ろで後方待機策。自身の後ろには3、4頭しかいない。「本当はもう少し前に行く予定だった」とレース後の吉永だが、吉永はもちろん、客席のファンも分かっている。これがシービーだ。
向正面から3コーナーにかけて徐々にポジションを上げていく。シービーをマークするように後方に控えていた2番人気ウズマサリュウの久保敏文騎手は「一緒に上がって行かなあかんと思っても、全然動けないんよ。下(馬場)を気にしてしまって。シービーは楽にいくんだもんね」と脱帽。同じく後方からレースを進めた5番人気メジロモンスニーの清水英次騎手は「こっちはおっつけおっつけだろ。なのにシービーは引っ張りきりで馬群の中に突っ込んでいった。正直、参ったよ」と、かぶりを振った。この道悪のうまさは、「重の女王」と呼ばれ、吉永も騎乗した母シービークインを思い出させた。
ともあれ、ライバルの言葉を裏付けるようにミスターシービーは道悪を苦にせず馬なり。「脚があるから、どんなとこを通っても抜け出せる。道悪だから、いつもよりは気持ち早めにね」と吉永。
極悪馬場の中山4コーナーで他馬がもたつくなか、シービーは抜群のコーナーワークで瞬く間に馬群をさばき、先頭に立っていたカツラギエースに並びかける。これをあっさりかわすと、馬場の真ん中で先頭に立った。追いすがったのは、立て直して外から伸びたメジロモンスニー。脚勢は馬場のいいところを通ったメジロモンスニーに分があるかに見えた。しかし、半馬身差が最後までそれ以上詰まることはなかった。吉永は「競り合えば絶対に抜かせん自信がありました」と胸を張った。メジロモンスニーの清水は「天才やわ、シービーは」とため息をついた。
ミスターシービーは76年に優勝した父トウショウボーイとの皐月賞父子制覇を達成。「天馬二世」と称えられ、3冠への一歩を刻んだ。