【宝塚記念】16年のマリアライト 勝因は本番のみにあらず
2023年06月23日 05:00
競馬
しかし、逃げたキタサンブラックをかわし、追い込んできたドゥラメンテを封じて真っ先にゴールに飛び込んだのは、8番人気の牝馬マリアライト(美浦・久保田貴士厩舎)。手綱を取ったのは名手・蛯名正義騎手(現調教師)だった。
「馬場が悪かった(やや重)ので、コースロスがあっても奇麗なところを走らせました。追ってから凄く伸びたわけではないけど、他の馬も伸びあぐねる馬場だった分、何とかつかまえてくれました。最後にドゥラメンテに迫られると、マリアライトが再び伸びて勝ってくれたので、レース後には“お前、凄いなぁ”って声をかけました」
蛯名騎手はそう言った。前年にエリザベス女王杯(G1)を勝った時も乗っていた同騎手が、初めてコンビを組んだのはマリアライトがまだ3歳の1勝馬だった時期。そこを勝利したものの、その後の1000万条件では惜敗を繰り返した。名手が当時を述懐する。
「惜しい3着とかが続いて、普通なら“何とか勝たせて秋華賞に出させたい”などとなるところでしたけど、久保田調教師は決して無理使いをしませんでした」
結果、3歳の夏に412キロしかなかった体は減ることなく、エリザベス女王杯を勝った時は430キロ、この宝塚記念では438キロまで成長していたのだった。
本当の勝因は、目に見えるレースにだけあるわけではない。蛯名騎手の言葉を聞き、そう思ったものだ。果たして今週末の宝塚記念、勝ち馬は既に決しているのかもしれない。 (フリーライター)