【ウマ娘と名馬】悲鳴を歓声に変えたヒーロー
2024年04月26日 12:00
競馬
ゲーム内のメインストーリー第1部第2章「小さながんばり屋」はライスシャワーが主人公。菊花賞でミホノブルボンを、天皇賞・春でメジロマックイーンを破るまでの軌跡がドラマチックに描かれている。
ブルボンは史上2頭目の無敗でのクラシック3冠制覇、マックイーンは史上初となる天皇賞・春3連覇が懸かった“1強ムード”で、菊花賞にいたってはブルボンの3冠達成を祝福するバルーンが事前に用意されていたほど。ライスシャワーの勝利はいずれも大記録を阻止する形に。レース結果を伝えるスポニチ紙面では、メイン原稿の主語は負けたブルボンとマックイーン。見守った観客の描写として「悲鳴」「ため息」という言葉が共通して使われている。当時のこの競馬場の異様な雰囲気は「ウマ娘」のストーリーにも落とし込まれている。
ブルボンやマックイーンが現役を引退し、今度は主役として競馬界を牽引することを期待されたライスシャワーだが、マックイーンを破った天皇賞後は極度の不振に陥る。1番人気に4度支持されるも全敗。骨折による長期休養も重なり、長らく勝利から遠ざかる。
丸2年ぶりの勝利を目指して出走した95年の天皇賞・春。これまではブルボンやマックイーンなど有力馬を徹底マークしてゴール寸前で競り落としてきたライスシャワーだったが、この日は「ライスが自分でスッと上がっていった」(的場均騎手)と残り1000メートルを待たずに先頭に立つ。思いがけない積極策で観客の視線を独占。最後は後続の追い上げを僅か16センチしのいで真っ先にゴール板を駆け抜けた。
そのレース後の様子が描かれているのが、ライスシャワーのサポートカード「『幸せ』が舞う時」のイラストだ。
「勝利を願ってくれるのは、ただ1人だけ。自分だけだと、少女は思い込んでいました。けれど全力で走りぬいた少女を迎えたのは、まるで高い高い青空から舞い落ちるような、たくさんのたくさんの声援でした」(同サポートカードのエピソードより)
このレースの結果を報じるスポニチ紙面(95年4月24日)は「文句なし 日本一のステイヤー」の見出しで、京都競馬場が悲鳴やため息ではなく、「歓声」に包まれたことを報じている。東西の垣根が大きかった時代にもかかわらず「まるで関西馬のような人気」と京都競馬場に集まった大観衆がライスシャワーの復活劇に熱狂した様子を伝えた。その2カ月後、ライスシャワーは現役最後のレースとなるグランプリ宝塚記念に堂々ファン投票1位で選出。正真正銘のヒーローとなった。
さて、「第169回天皇賞・春」が行われる4月28日、京都競馬場では第10競走に「ライスシャワーカップ」が組まれている。JRAウルトラプレミアムの対象のため、全投票法の払戻率を80%に設定した上で、全投票法の払戻金に売上げの5%相当額を上乗せして払戻が行われる。競馬ファンも、そして「ウマ娘」ファンも熱狂する素晴らしいレースになることを期待したい。