業界未経験から厩務員へ「やりがい」感じる日々
2024年10月30日 05:05
競馬
検量室前、担当馬と武豊を満面の笑みで迎えた大内紗南厩務員は「凄いジョッキーなので、とにかく無事に終わってほしい…と願っていました」とレース前の心境を振り返りつつ「中央から園田に転厩後はなかなか勝てなかったので、レース後はありがとうございますと感謝を伝えましたが“これで僕も優勝できる”と。優しかったです」と鞍上の気さくな人柄に感動した。
大内厩務員は今年4月30日から松浦聡厩舎のスタッフに加わった。学生時代は軽音楽部に打ち込み、馬とは無縁の環境で育った。大学卒業後は書店に就職したが「ウマ娘」がきっかけで興味を持ち、園田競馬場で競走馬のドーピング検査などに関わる仕事に転職。約2年間、勤めた。そこで汗を流しながら担当馬の世話をする厩務員の姿を見て「私もやりたい」と未経験で業界に飛び込んだ。
まだ真っ暗な時間から馬の手入れ、寝わら上げ(馬房掃除)など作業が始まる。体力的には厳しいがアットホームで楽しい厩舎がモットー。松浦聡師をはじめ、優しい先輩らが丁寧に指導してくれた。厩舎に入り、ちょうど半年がたった。「前職で厩務員の仕事を見ていて、大変だと分かっていました。入る前から理想がなかったからこそ、今は楽しく仕事ができている。厩舎の方々に恵まれました」と目を輝かせる。
真剣に馬づくりに取り組んでも、簡単に勝てないのが競馬。だからこそ勝った時の喜びは大きい。「もちろん仕事でつらいことは多いですけど、その分、やりがいを感じている」。15年に開業した松浦聡厩舎は29日時点で通算298勝。大内厩務員は「その時のタイミングもありますが、担当馬で厩舎のメモリアル(300勝)を達成できたら」と笑顔で語った。夢は膨らむばかり。努力を積み重ね、一人前の厩務員を目指す。
◇大内 紗南(おおうち・さな)1999年(平11)3月10日生まれ、兵庫県西宮市出身の25歳。趣味は映画観賞。好きな作品は「すばらしき世界」。
◇田村 達人(たむら・たつと)1992年(平4)11月12日生まれ、大阪市城東区出身の31歳。高校卒業後に北海道新ひだか町ケイアイファームへ。育成&生産に携わる。予想スタイルは取材の感触。