将棋界屈指のサッカーフリーク渡辺明王将 欧州CLを語る(上)

2019年06月01日 11:15

サッカー

将棋界屈指のサッカーフリーク渡辺明王将 欧州CLを語る(上)
リバプールのエンブレムの付いた赤いクマのぬいぐるみを掲げる渡辺王将 Photo By スポニチ
 将棋界屈指のサッカー好きとして知られる渡辺明王将(35)=棋王との2冠=が6月1日(日本時間2日午前4時~)に行われる欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝戦に向けて、今季の振り返りや見どころを語った。全2回の1回目。
 14年ぶり6度目の欧州王座を狙うリバプールか。クラブ史上初の欧州制覇に王手をかけたトットナムか――。渡辺は両軍のエンブレムの付いた熊のぬいぐるみを一目、悩む様子もなく「リバプールでしょ!」と赤色の熊を掲げた。

 「リバプールは今季プレミアリーグ2位。過去の最高勝ち点を大幅に更新しながら優勝できないという残念な一年だったので、ここは優勝したいという気持ちがすごく強いと思います。これだけの出来で、今年何も獲れてないですからね。心情的にはリバプールが何かしら1つくらい優勝してほしいとは思いますね」

 11季ぶりのプレミア勢対決となる決勝戦。前哨戦の今季のプレミアリーグでは2試合で対戦し、リバプールが両試合とも2―1で勝利を収めた。「今季プレミアリーグでの勝ち点差も結構ありましたからね。プレミアでの内容がそのままならリバプールです」と加えた。
 
 一方、初戴冠を目指すトットナム。渡辺は、準々決勝マンチェスターCとの第2戦を「今季の欧州CLベストゲーム」と称えた。3―4で迎えた後半アディショナルタイム。トットナムはゴールネットを揺らされた。2戦合計4―5とされて逆転敗退かと思われたが、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の介入でオフサイドと判定されてノーゴール。今季決勝トーナメントから導入されたVARの“神の目”に救われた形となった。

 「この試合は面白かったですね。序盤から点の取り合いで、追いついたり突き放したりというゲームで。最後、マンチェスターCの点が入ったと思いきやオフサイド。でもVARが無かったら(得点が)認められてたと思うんですよね。最後の劇的な終わり方も含めて、このゲームは最初から最後まで見どころが多かったですね」

 将棋界でも、近年では棋士の研究にAIが導入されたり、対局の優劣をソフト解析させるなど、IT化が目覚ましい。

 「棋譜の自動入力なんかについても研究中みたいです。実際の対局で稼働する日もそう遠くはないかもしれないですね。仮に反則があった時とかにサッカーのゴール・ライン・テクノロジー(GLT)みたいな技術が出来たり、秒読みもAIがやる時代が来るのかな(笑い)」

 準決勝のリバプール―バルセロナ戦にも注目した。アウェー第1戦の0―3敗戦から2戦合計4―3と逆転。「よくサッカーでは3―0は危ないと言われるんですけど、多分、油断が生じるからだと思うんです。将棋でも大優勢の状態が一番危ないんです。勝勢になると、プロ同士はもう逆転は無いんですけど、勝勢の一歩手前って、どうやっても(どう指しても)良いんです。でもそれが危ない。結構逆転ってあるんです。将棋では対局の優劣をコンピューター解析させて数値化する“評価値”というものがあるんですけど、例えば1500点が勝勢だとすると、そのちょっと手前の800点くらいの状態が一番危ない。もう少し前の600~700点だと、ちょっと指しやすいくらいなので油断はないんですけど、800とか900点くらいになると目に見えて優勢に見えてきて。しかも良い手が1通りじゃないんですよ。これでも良さそう、これでも良さそう、と目移りしてる間に危なくなるという。サッカーも4―0は勝勢です。2点差だとワンチャンスだと思いますし、3点差も結構追いつかれる。将棋でもそういうことあるな、と見ていて思いました。油断なんですよね。人がやることなので、そういうことは起きるんですよね」と自身の経験に重ねて大逆転劇を振り返った。

 渡辺が海外サッカーにハマったのは2011年頃。もともとサッカーが好きだったが、愛息のサッカークラブ入部とともに「海外の試合を一緒に見ようと思って見始めた」という。さらには、サッカークラブの試合運営のために4級の審判資格も取得した。

 「資格を持っていると毎年FIFAのルールブックが送られてくるんです。毎年ルールが微妙に変わるので、それを見るのが結構楽しみでしたね」

 対局やイベント出演など、忙しい日々を送る中でも定期的に将棋関係者を募りフットサルで汗を流しているという。フットサル仲間の広瀬章人竜王(32)とは15年にドイツ、イタリアにサッカー観戦旅行にも繰り出した。

 「イタリアはユベントスとトリノのトリノダービーだったんですけど、間違えてユベントスサポーターの席に入ってしまって。後ろからビンとか物が飛んでくる席で、点が入るとまず後ろを振り返って物を避ける(笑い)。近くで紙爆弾を投げた人がいて、ケガ人が出たと翌日の新聞に載ってました。日本では絶対にない体験。現地ではかなり怖かったですけど、機会があればまた行きたいですね」

 次章では渡辺にとっての過去最高の欧州CL決勝、目前に迫る自身のタイトル戦について問う。

 ◇渡辺 明(わたなべ・あきら) 1984年(昭59)4月23日、東京都葛飾区生まれの35歳。所司和晴七段門下。00年3月に四段昇段を決め、史上4人目の中学生棋士に。04年、初タイトルとなる竜王を獲得。以降9連覇。獲得タイトルは竜王11、王座1、棋王7、王将3の通算22期(歴代5位)。永世竜王、永世棋王資格保持者。家族は妻、長男。趣味はフットサル、プロ野球観戦、競馬、寺社の御朱印集め。

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