梅山修氏 全員が持っていた「長いパスで相手の勢いを裏返す意識」
2023年03月05日 04:40
サッカー
前半は予想通り、札幌がボール保持者に加え、そのパスの受け手にも厳しくプレッシャーをかけ、新潟はボールを失い、押し込まれるシーンが多かった。しかし、このパスが思うようにつながらない状況を自らコントロールできるのが強みとなっている。パスワークは今や新潟の代名詞になっているが、チームとしてのこだわりはそこではなくゴール。相手が前から来るのであれば、長いパス1本で相手の勢いを裏返す意識を全員が持っている。この選択肢が、逆に新潟のボール保持率の高さを支えてきた。
1点目がまさに象徴的だった。自陣低い位置で、近くに出しどころがなかったDF舞行龍から一気に前線のFW鈴木へ。そこまで飛ばすことによってMF伊藤が前を向いてボールを受けることができ全体がスピードアップ。左からMF三戸がカットインして出したラストパスは、中央で要求していた伊藤のやや後ろに出された。だが、これを伊藤が前向きのまま軸足の後ろを通して右足でコントロールしたことによって、体の向きを変えるタイムロスをなくし、視野を確保。よく周囲を認知していた伊藤は、慌てて左から寄せてきた相手の逆を取るように対角にシュート打ち込んだ。
チームのクリエーティブな意図と個人技術から作り出した見事なゴール。2点目の太田のシュートも、FKのこぼれ球をショートバウンドでアウトにかけてコンパクトに振り抜いたもの。前節広島戦で決めたゴールと同じく、反応とキックの選択が見事であった。
次節、ホームで戦う川崎も丁寧かつ大胆にサッカーを組み立ててくる。スタイル的に言えば似ている相手。J1の初戦3試合を上々の入りで自信を“つかみかけている”新潟にとって、チーム・個人・技術といった総合力を測る上で、また自信を確実に“つかむ”上で、最も重要であり、今季を占うと言ってもいい試合になるだろう。
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