紛うことなき天才だった小野伸二が見せた18歳の“わがまま”

2023年09月27日 16:20

サッカー

紛うことなき天才だった小野伸二が見せた18歳の“わがまま”
1998年3月21日撮影。市原戦で先発デビューし、ドリブルで攻め込む小野@駒場スタジアム
 1997年暮れに開幕した全国高校サッカー選手権大会に姿はなかったが「清水商に凄い天才がいる」と名前はとどろいていた。
 大会中、帝京高の練習取材現場で、何気なく中田浩二と木島良輔に聞いてみた。

 「小野伸二ってどうなの?」

 2人とも真剣な表情で「僕らとはレベルが違いますよ」と答えたのを今でも覚えている。

 浦和レッズ入団後、1年間取材で追い続けた。いや、楽しませて貰った。

 浦和駒場スタジアムのデビュー戦で小野のプレーを見たベテランサッカー記者は「100年に一人とかじゃねえな。あいつは日本に初めて現れた天才だ」とつぶやいた。

 とにかく毎日プレーを見るのが楽しかった。どの足でどのタイミングで蹴るのか、パスを目で追えないことも多かった。

 練習終わりの小野に他の選手がテレビで得意げに披露していた曲芸的なリフティングが出来るか聞いてみた。小野はジュースの入った紙コップを持ったまま一滴もこぼすことなく、軽くこなしてしまった。

 毎日のしつこい取材に対しても質問者の目を真っ直ぐ見て答える。誠実だった。

 ただ、ひとつ忘れられない小野の“わがまま”がある。

 今も当時も浦和レッズは超人気クラブで、ゲームチケットの入手は困難だった。

 ある試合で母親が急きょ観戦に来られることになった。小野がクラブ広報に席を用意してくれるよう頼むと、「遅いよ。もうないよ」と言われた。

 すると「なんで?お母さんが来るんだよ!」と急に声を荒げて広報に食い下がったのだ。

 そこまで感情をあらわにする小野を見たのは初めてだった。

 44歳まで現役を続けた小野が、テレビやSNSで夫人や娘との仲睦まじい姿を見せるたび、サッカーと同じように家族を愛していた18歳当時の“わがまま”を思い出す。(君島 圭介)

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