4月から配信開始 電車の中のテレビ局「TRAIN TV」 前例のない挑戦、狙いやこだわりは?
2024年05月04日 05:01
社会
TRAIN TVが生まれる要因の一つになったのは現代のスマートフォン社会。TRAIN TV事業部長の佐藤雄太氏(44)とブランドマネジャーの中里栄悠氏(44)によると、車内サイネージは2002年から設置され、広告を中心に放映してきた。だが08年に日本で初めてiPhoneが発売された後、あらゆる情報がスマホで手軽に得られるようになり、乗客の目線は常に下へ。17年ごろから、広告売り上げの伸びが鈍化した。
さらに20年には新型コロナの影響で、電車の利用者は激減。それに伴い広告収入も減少した。コロナ禍が明け、利用客が戻っても変わらない状況を打破するには、まず車内サイネージに目を向けてもらうことが大切と判断。これまでのニュースや天気予報から、動画コンテンツ中心の内容にするため準備を重ねてきた。
番組作りは制作会社とタッグを組み、映像だけで見せるための工夫が随所に光る。内容を分かりやすくするため、字幕の文字数やフォントの大きさなどを細かく研究。グルメ番組では、こんがり焼き色のついたギョーザなどの映像が画面いっぱいにまで拡大され、目を引きつける。
お笑いではフリップを用いたサイレント大喜利などを展開。冠番組を持つチョコレートプラネットは「チャップリン時代のお笑いがヒント」とし、動きや表情で笑いを届ける。山手線の神田駅を利用する会社員の40代女性は「チョコプラの番組が通勤時間の楽しみ」と話した。佐藤氏は「交通メディアとして前例のない挑戦でまだ手探りですが、これから発展させていきたい」と力を込める。今後は時間帯や曜日によって番組ジャンルを変更する試みや、スポーツ中継の実施などにも意欲を見せる。乗客の目線を下から上へ向けるための試行錯誤は続く。