海老沼銅メダル お粗末判定でリズム狂った
2012年07月30日 06:00
柔道
館内の大歓声に応えることもなく、大の字になって天井を見つめた。3位決定戦。ザグロドニクを豪快な大腰で宙に舞わせ、一本勝ち。海老沼は直立不動で「金メダルじゃなきゃ意味がないんで。申し訳ない気持ちでいっぱいです」と言うと、いがぐり頭から流れ落ちる汗を、柔道着の左袖でぬぐい、目を閉じた。
「きょうは何回もハプニングがあったけど、会場のお客さんが後押ししてくれた」。“誤審”トラブルは、チョ・ジュンホとの準々決勝だ。延長戦1分22秒に小内巻き込みで、一度は主審が「有効」をコール。しかし、試合場を管理する3人のジュリー団は“有効以下”と判断し、キャンセルした。ところが、その後の判定は、有効を宣したはずの審判全員がチョ・ジュンホの勝ちと判定。会場の大ブーイングで、再びジュリー団が判定を覆した前代未聞の事態となった。「試合内容は覚えてないけど、勝たせてもらったと思っている。だから優勝しなければいけなかった」。
だが、その“運”を呼び込んだのは、海老沼の柔道に対する純粋な思いだった。兄2人について地元道場で柔道を始めたのは「おむつをしていた頃」。以降、ジュニアで活躍する2人の兄を追うように、打ち込んだ。ケガをして練習ができなければ泣き、兄弟げんかも自宅の和室で柔道。世田谷学園高2年時からは腰痛に苦しみ、不本意な成績も続いた。ブロック注射を打ち試合に出られると「こんなに幸せなことはない」と喜んだ。
代表に決まった5月以降の合宿で、自らを追い込み過ぎ「技がかからないことがあって」落ち込んだ。付き人を務める長兄・聖さん(28)に事態を聞いた母・道子さん(52)の激励メールに、海老沼はこう返信した。「最後は努力した人間が報われると思います」。四段の父・時男さん(58)が作った柔道人形を兄弟の誰より最後まで投げ込んでいた5歳の時代と変わらない、まじめな男の開き直りだった。
準々決勝で痛めた右肘の影響で、準決勝は一本負けをしたが、言い訳はしなかった。「自分の目標は五輪で金メダルを獲ることなので、次に向かってやっていきたい」。吉田監督に並ぶことも、昨夏に急逝した藤原敬生・明大前監督(享年52)との約束を果たすことも、まだできる。柔道を愛する22歳の挑戦は、ここからが本番となる。
▼全日本男子の篠原信一監督 今の制度の問題は、審判が決めたことを(ジュリーが)変えることだ。判定の時は(取り消された)海老沼の有効が、(以前あった)効果として残っていると考えていた。海老沼も韓国の選手もかわいそうだ。
▼00年シドニー五輪柔道100キロ超級「世紀の誤審」 日本の大黒柱・篠原信一(当時27)が決勝で宿敵のドイエ(フランス)と対戦。開始1分すぎに内股を透かして完全な一本を奪ったが、審判は逆に相手に有効を与えて、まさかの敗戦になった。山下泰裕男子監督らが猛抗議したが、裁定は覆らずに後味の悪い銀メダルとなってしまった。試合後にIJFのジム・コジマ審判理事(審判長)は「私も日本の言う通りだと思う。ただ、試合は3人の審判が裁くもの」と誤審を公式に認める発言をした。これをきっかけに柔道界でビデオ判定導入の議論が始まった。
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