苦労多い検査員も…やりがい感じるトップ選手の“達人技”目撃

2016年06月22日 12:30

スポーツ

ドーピング検査員はミタ(下) 
 苦労も多いドーピング検査員だが、やりがいはどんなところにあるのだろうか。日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の平井千貴シニアマネジャーは「選手が検査に対してすごく真摯(しんし)に対応してくださると、その選手のファンになってしまう」と検査員ならではの視点で語ってくれた。

 採尿時には男女とも検査員が見える状態で用を足す。初めての選手だと「尿意はあるけど出ません」と緊張して何時間もかかる場合もあるという。その点、トップ選手ほど経験が多く、手際も良い。「五輪のトップ選手は尊敬するぐらいサッと済ませます」。平井さんが驚いたのは、ある競技でこんな選手がいたことだ。「勝ったら検査があると分かっていたので、トイレ我慢して決勝に行きましたよ。すぐ出るからトイレ行きましょう」。ここまでいくともはや“達人”の域である。

 陸上や競泳などでは異なる種目で連日決勝があるため、何度も同じ選手と顔を合わせることもある。メダルを獲れば検査は必須。「あしたもまた来るね」と再びメダルを獲って検査に来ることを約束して選手が去っていく。平井さんは「じゃあ頑張ってきてね」と送り出す。検査に情が入り込む余地はないが、ドライなばかりではない人間のやりとりもあるのだ。

 4年後の東京五輪では約500人もの検査員が必要になる。JADAでは毎年春頃にウェブサイトで公募しており、書類審査、講習会、試験と面接、現場実習を経て適性に問題がなければ検査員になれる。現場に出る頻度に応じ、研修期間はだいたい半年から2年ほど。こうした人材の育成もスポーツ界には重要だ。

 最後にどんな人が検査員として望ましいのかを平井さんに聞いてみた。「専門知識よりは、きちんとルールに従って仕事ができること。守秘義務を守っていただけること。公的で、社会貢献的要素が強く、過酷な部分もある。それを分かった上で、スポーツ界のために頑張って協力しますと言ってくださる方ですね」。アンチ・ドーピングは現代スポーツの最重要科目。これもスポーツとの関わり方の一つである。 =終わり=

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