金藤、ぶっちぎり頂点!ロシア難敵・エフィモワ黙らせた1秒67差
2016年08月13日 05:30
競泳
“競泳界の澤”が世界を制した。女子200メートル平泳ぎ決勝は、競泳日本代表の主将・金藤理絵(27=Jaked)が2分20秒30で優勝。同種目では1936年ベルリン五輪の前畑秀子、14歳で92年バルセロナ五輪を制した岩崎恭子に続く3人目の金メダルに輝いた。08年北京五輪に出場も、12年ロンドン五輪出場を逃してからは何度も引退を考えたが、決勝ではライバルのユリア・エフィモワ(ロシア)を下し、念願の頂点に立った。
スタンドから投げ込まれた日の丸を掲げて、カメラマンのリクエストに笑顔で応えた。世界大会でついにつかんだ初めてのメダル。金藤は大観衆の視線を一身に浴びた表彰台で「恥ずかしい」と照れながらも、「自分だけの君が代を聴くことができて涙が出そうになった」と歓喜に浸った。
ロンドン五輪200メートル平泳ぎ銅メダルのエフィモワを堂々と下した。ドーピングの前歴があるエフィモワは、一度は参加資格なしと裁定が出ながら提訴が認められて、大会直前に出場が決まった。疑惑の相手との真っ向勝負。10年間指導を受けている加藤コーチからは「エフィモワも命を懸けて来ている。おまえは努力で命を懸けてやってきた。負けるんじゃない」と厳命された。結果はライバルに1秒67の大差をつけて金メダル。見事にその期待に応えてみせた。
「この子は間違いなく2分18秒台後半は出る」。2007年2月。東海大の加藤健志コーチは、入学が決まっていた広島・三次高3年の金藤に合宿で初めて会った時の衝撃を覚えている。当時指導していた世界選手権の男子銅メダリスト、今村元気と一緒に、年に2、3度しかしないハードな練習をさせると、金藤はぴたりと後ろを泳ぎ続けた。世界記録を上回るタイムを出せる可能性を見いだして以来、ここまで二人三脚で歩んできた。
08年に19歳で北京五輪に出場して7位。09年には日本記録を連発した。順風に見えた競技人生だが、10年春にヘルニアを患うと、渡部香生子や鈴木聡美ら若手に追い抜かれ、ロンドン五輪選考会で敗退。人生が暗転した。その後は父・宏明さんでさえ「やめる詐欺」と言うほど何度も引退を口にした。転機は昨年の世界選手権。見せ場なく6位に終わって「悔しい」というより実力を出し切れず「情けない」と感じた。この時、加藤コーチに「こんなレースで競技人生を終わりたくない」と直訴。「情けないレースを応援してくる人が見る最後にしたくない」と現役続行を決意した。
勝負に出た金藤は、男子の萩野が「理絵さん(金藤)にはかなわない」というほどの猛練習を自らに課した。昨冬は気温が40度に達するオーストラリアの市民プールのコースを借り切り、涙を流しながら1日約2万メートルを泳ぐ猛練習に耐えた。ベンチプレスは過去最高の75キロまで上げられるようになり、武器の下半身に上半身の筋力を強化すると、4月の日本選手権では日本人で初めて2分20秒の壁を突破。そしてついに五輪での金メダルを手中にし、完全復活を果たした。
「今までメダルが獲れるチャンスがあった中で獲れなかったので、お待たせしましたという気持ち」。世界の頂点に立った金藤は、充実感をにじませた。
≪歴代3番目大差≫ 金藤は2位エフィモワ(ロシア)に1秒67の差をつけた。電動掲示が公式記録となった72年のミュンヘン五輪以降、200メートル平泳ぎ決勝では歴代3番目の大差だった。これまでの1位と2位の最大タイム差は、76年モントリオール五輪で優勝したコシェベヤが2位ユルチェンヤ(ともに旧ソ連)につけた2秒73。08年北京五輪ではソニ(米国)が2位ジョーンズ(オーストラリア)に1秒83の差をつけて優勝したが、コシェベヤもソニもこの時には当時の世界新記録を樹立。金藤のタイム差はこれに次ぐ“圧勝記録”となった。
ちなみに過去の同種目で優勝している日本選手では岩崎(92年バルセロナ五輪)が0秒20差、前畑(36年ベルリン五輪)が0秒6差(手動計時)。金メダルを獲得しても接戦が当たり前だった日本競泳界の中で、金藤が残した1秒67差は群を抜いて際立っている。
◆金藤 理絵(かねとう・りえ)
☆生まれとサイズ 1988年(昭63)9月8日、広島県庄原市生まれの27歳。1メートル75、64キロ。血液型A。
☆家族 父・宏明さん(61)、母・富士子さん(58)、兄・康宏さん(32)、姉・由紀さん(30)。
☆経歴 庄原市立山内小―庄原市立山内中―広島県立三次高―東海大―東海大大学院卒。水泳用品の製造・販売などを行うフットマーク社が、国内販売ライセンス契約を締結しているイタリアの競泳用品メーカー「Jaked(ジャケッド)」所属として活動。
☆競技歴 兄・康宏さん、姉・由紀さんの影響で小学校3年生で水泳を始めた。三次高3年生で06年インターハイ女子200メートル平泳ぎ優勝。東海大2年生で08年日本選手権200メートル平泳ぎ2位となり北京五輪出場権を獲得。北京五輪では7位。同種目の自己ベストは今年4月の日本選手権でマークした2分19秒65(日本記録)。
☆競泳の澤穂希 元なでしこジャパン澤穂希さんによく間違われる。金藤本人も東海大時代、教材に載っていた澤さんの写真を見て「やばいくらい似ている」と実感。リオ五輪出場決定時に「“澤さんに似ている人が水泳界にいる”と見てもらって“この人も凄い”って言われたい」と本物に負けない活躍を誓った。
おすすめテーマ
2016年08月13日のニュース
特集
スポーツのランキング
-
錦織、劇的勝利に感極まる 準決勝のマリー戦「集中してプレーしたい」
-
【世界のアスリート】10歳で身長183センチ いじめ乗り越えた“暁”の心
-
池江 喜びよりも「悔しさ大きい」7種目12レース泳ぎ切る
-
【メダリストは見た】荒川静香 金藤、初五輪からの8年 思い伝わったインタビュー
-
卓球・水谷“ギター侍ネタ”で波田陽区に応戦「最近は澤部ですから~」
-
水谷 規格外の発言連発!ノーパン主義、若い芽は早めに摘む…
-
フェルプス 23個目金ならずも“3人同時銀メダル”に「ワイルドな終わり方だ」
-
サオリン 競り負けた第2セット悔やむ 8強入りへ「自分たちのバレーを」
-
金丸8着にぼう然 19歳ウォルシュも準決勝進めず 陸上400M
-
金藤“藻のプール時代”のコーチも歓喜「会ってしまったら涙が出てしまう」
-
地元ブラジル選手が薬物違反 自転車、五輪前の検査で
-
バレー女子 ロシアにストレート負け 決勝T進出懸けリーグ最終戦へ
-
エジプト選手、イスラエル選手との握手拒否 IOC、事実関係調査へ
-
【林享の目】金藤、新スタイル死角なし 萩野、前半攻めてほしかった
-
同郷・水谷&美誠は家族ぐるみの仲「隼はお兄ちゃんみたいな存在」
-
崎山23位、室田は58位 全米シニアオープン
-
水谷隼 勝負を分けた第4ゲーム 技以上のメンタルで劣勢はね返す
-
井上康生監督 男泣き 全階級メダルに感慨「選手を信じるだけだった」
-
現役世界王者の前に涙…原沢は絶対王者にあと一歩 山部は組み勝つも技が出ず
-
日本女子 連続メダルへ笑顔の好発進 初五輪の美誠「全然緊張しなかった」
-
【大畑大介の目】世界に勝てる力を証明 課題は日本国内の“方向性”
-
選手村の部屋でロシア国旗が剥がされた?シンクロ選手がインスタに投稿
-
中川は予選敗退「失敗は思いつかない 今の実力」
-
錦織、日本勢96年ぶりメダル王手!モンフィスとの激闘制す
-
王者リネールにブーイングの嵐も…原沢「勝ってこそ意味がある」
-
トランポリン女子個人の中野、13位で予選落ち
-
池田1オーバーで37位、片山は58位に後退
-
原沢 銀メダル獲得!日本男子は全階級でメダル獲得の偉業達成
-
4強セブンズ 奇跡は起きずも…最後は“名曲”大合唱
-
羽賀 銅メダルの悔しさバネに…「もっと成長しないと」
-
女子バド奥原 わずか31分でストレート勝ち「悪くなかった」
-
男子バスケ、リトアニア3戦全勝 NBAクズミンスカス23得点
-
女子バスケ 金星まで一歩届かず エース渡嘉敷「200%勝てた」
-
片山 ボギー先行で我慢の9ホール「フワフワしてしまった」
-
池田勇太 雨&風の中でも粘りみせ「修正点はない」
-
錦織圭 ベスト8進出! 内村&セブンズに刺激もらった
-
寺本 52年ぶり女子体操個人総合入賞!「やり切れて良かった」
-
鈴木桂治コーチ 羽賀への荒療治は「エリート街道で来た」から
-
羽賀 100キロ級表彰台はシドニー大会以来の快挙!
-
萩野、銀!…でも「悔しい」“永遠のスター”フェルプスには歯が立たず
-
藤森 大激戦の200メートル個人メドレー決勝、0秒16差で4位
-
最多4Tレメキ セブンズ引退表明も「19年はW杯を目指したい」
-
萩野、意外なプライベート…美術館巡り、宝塚観劇、合宿には哲学本も
-
フェルプスV4 やっぱり“怪物”金メダル22個目で史上最多更新中
-
セブンズ“プロ化”計画 岩渕GM「実現させたい」
-
フィジーが7人制ラグビー初代王者 初の五輪メダルで祝日に
-
金藤、ぶっちぎり頂点!ロシア難敵・エフィモワ黙らせた1秒67差
-
セーリング吉田&吉岡 僅差2位に「まだチャンスある」
-
ロシア・エフィモワ “薬物”ゴタゴタで直前参加決定から銀
-
馬場馬術 日本勢は予選敗退 45位原田が最高
-
金藤の金 前畑、岩崎…日本3人目&世界歴代3番目の大差
-
金藤【父・宏明さんからの手紙】泣き虫 理絵ちゃんへ
-
金藤を変えた“金言”「五輪に行こうが行くまいが、思い切りやって」
-
金藤 東京五輪は「競技者として携わることは考えられない」
-
卓球ニッポン黄金期再来へ希望も…星野強化本部長「まだ壁はある」
-
水谷発掘の前原氏 10代から成長見守り表彰式で感無量
-
団体戦カード幸運 男女ともに決勝まで中国と当たらず
-
愛の3位決定戦 視聴率15・6%で内村超え!
-
入江まさかの8位「選手として賞味期限切れでも、消費期限はまだ」
-
中3・酒井 背泳ぎ予選敗退もリレーに意気込み「東京五輪につなげたい」
-
塩浦「集中できていたけど遅い」準決最下位「凄く悔しい大会だった」
-
女子バド「タカマツ」組 2戦2勝で8強入り!
-
男子バド早川&遠藤 「死の組」で格上中国ペア撃破
-
藤井 予選20位「最後ガス欠」もリレーは「十分チャンスはある」
-
金藤を見守り支えた姉、兄も万感…つらい時期を乗り越えた妹ねぎらう
-
山口 逆転で初戦白星! 女子シングルス勢は好調発進
-
ホッケー女子 英国に破れ3連敗 最下位で崖っ縁…
-
村上 悔しい14位に「いつもと違うリズムになった」
-
個人総合V2内村 海外メディアも絶賛!「体操界のフェルプス」
-
原沢 初の五輪で順調な滑りだし「重量級を背負う覚悟はある」
-
山部 払い腰さく裂で準決勝へ!「思い切り闘う」
-
陸上金メダル1号は…世界新で女子1万メートル・アヤナ
-
川元 0・01秒差で無念4着…「力が足りなかった」
-
陸上男子100M予選まもなく! 桐生「9秒台は通過点」
-
水谷 日本卓球界の悲願に雄叫び! 家族の英才教育実る
-
卓球ニッポン、女子団体2大会連続メダルへポーランドに快勝発進
-
400Mメドレーリレー 日本男子は全体3位で決勝へ 女子は敗退
-
山部 意地の銅メダル! 日本柔道11個目のメダル
-
古川は準々決勝敗退「半分うれしくて、半分悔しい」
-
松永が7位 男子20キロ競歩で日本人初入賞
-
石原は準決勝に進めず 女子クレー・スキート予選
-
池江、松本は予選通過ならず 女子50M自由形
-
女子軽量級ダブルスカル 大石、冨田組は12位
-
志水、プールに苦言「正直水球をやる環境ではなかった」
-
高島18位、関根20位…女子1万M アヤナ世界新で優勝
-
山部 2連続一本勝ちで準決勝進出 女子78キロ超級