昭和の男・瀬古氏の手腕に期待したい
2016年11月08日 09:00
マラソン
企業が選手強化の主体を担う日本で陸連にできることは限られている。長期的な展望に立ち、強化につながるような環境を整備するのが主な仕事だ。そのためには一人でも多くの選手や指導者と対話を重ね、相手の意見や要望を聞いた上で自身の経験を伝える必要がある。この順序が大切で、今の選手にいきなり「昔はこうだった」と言うと「あのおっさん何言ってんの」と逆に反発されるのがおちだろう。昔は昔、今は今。この溝を埋めるのはなかなか難しい。
低迷の続く今のマラソン界にはいろいろな意見がある。駅伝一つをとっても「駅伝重視の姿勢がマラソンをダメにした」という主張もあれば「駅伝の人気があるからこそいい選手が集まる」という擁護論もある。外国から指導者を招へいすべきだという声も多い。「もう何をやってもダメ」と言ったら元も子もないが、似たような気持ちを抱いている人が多いのも事実だ。
すでに日本のマラソンは落ちるところまで落ちているのだから、瀬古氏にはやりたいようにやってほしい。ドラマの「ラストコップ」ではないが、昭和の考えが現代にいい影響を及ぼすことだってある。瀬古氏の手腕に期待したい。(編集委員)
◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。