バスケットボールのゴンザガ大・フュー監督に見る既成概念の壊し方
2017年04月08日 11:00
バスケット
1999年に指揮官に昇格するや大学側を説得。学生数は7800人なのに6000席ある新しいアリーナを作らせ、練習施設を改修させた。さらに「金を使うな」と言われたリクルートを積極的に展開。その“レーダー”米国以外にもおよび、今季は日本の八村以外にポーランド、フランス、カナダの選手が登録メンバーに名を連ねていた。
「前例がないから」「時期尚早だ」。人間は面倒くさいことを頼まれたときの逃げ口上をどこかで準備している。だがその言葉を使う人たちは結局、何も生み出さない。しかしフュー監督はそんな言葉を口にする人たちを説得し、熱弁をふるい、夢を伝えた。
以後、ゴンザガ大はNCAAトーナメントの常連校となる。そして今年は20回目の出場でついに初めて「ファイナル4」に進出。ワシントン州の大学として初めて全米王者になれるところまで到達した。
4月3日。年間の放送権料が約860億円に達するNCAAトーナメントはアリゾナ州グレンデールでクライマックスを迎えた。試合会場はNFLスーパーボウルでも2度使用されたフェニックス大スタジアム。決勝戦には7万6168人が詰めかけ、ゴンザガ大対北カロライナ大の激闘を見守った。
ゴンザガ大にとっては勝てた試合。後半の残り1分55秒で65―63と2点をリードしていた。しかしここから連続8失点。過去5回の優勝を誇り、マイケル・ジョーダン(現NBAホーネッツ・オーナー)らNBAのスター選手を多数輩出している北カロライナ大は土壇場で底力を発揮して71―65で8年ぶりに頂点に立った。学生数はゴンザガ大の3倍以上となる2万8000人。“人間力”が最後はものをいった試合だったかもしれない。
試合終了のブザーが鳴ったときゴンザガ大の主力ガード、ナイジェル・ウィリアムスゴス(3年)は悔しさのあまりコート上で泣いていた。フュー監督はその背後から手をさしのべて何かをつぶやいている。どのように慰めたのかはわからないが、タイトルを逃した指揮官は敗北が決まると、選手の心のケアに努めていた。
決勝戦でベンチに入った1年生は両校併せて計7人。八村選手は泣きじゃくるチームメートを見てどう思っただろう?準決勝までロッカールームで水をかけあって喜んでいた仲間と監督のあまりの違いに驚いたのではないだろうか。それはネガティブな場面かもしれないが、そこまで涙するような試合をやったことは、ゴンザガ大にとって永久の財産になるだろう。
フュー監督が種をまいてから18年。ほぼゼロからスタートした無名校は今、全米の強豪校の仲間入りを果たした。前例をつぶし、物事を先送りしない前向きな姿勢。スポーツ界で躍進するチームには、そんな人材が必ずいると思う。(専門委員)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、佐賀県嬉野町生まれ。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。スーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会に6年連続で出場。
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