ついに一本化が実現する東京五輪のマラソン代表選考 裏を返せば…
2017年04月08日 10:00
陸上
強化サイドにも一本化を避けたい理由があった。メダルに一番近いと期待している選手がもし一本化された選考会で負けたらどうするのか、負ける以前に故障などで出場すらできなくなったら…。万が一の事態に備え、強化サイドが「ウルトラC」を発動できる余地を残しておくことは何より重要なことだった。
それが今回、ついに一本化が実現するのなら素晴らしいことだとは思う。だがその一方で残念な思いも少しある。今回の方針転換は、これまでのように陸連が「ごり押し」してでも出したい有力選手が今の日本にはいないということの裏返しでもあるからだ。
過去にたった一度だけ代表選考会が一本化された87年の福岡国際が、瀬古利彦の欠場で大混乱となって以降、陸連は一本化を完全に封印。その結果、五輪のたびに選考を巡る騒動が繰り返されてきた。だが今回は男女とも東京でメダルが獲れそうな選手は現時点で一人もおらず、万が一の保険を掛ける必要もない。それならばと「選手の育成」に重点を移した結果、行き着いた先が予選、決勝の2段階方式であり、実質初めてとなる選考会の一本化だったと考えれば納得がいく。
本来ならもっと早く、有力選手が林立していた時代にこそ一本化を実現すべきだった。だが、遅きに失したとはいえ、一本化が持つ意味は大きい。東京五輪まであと3年。やっと実現する一発勝負が東京でのメダルにつながるように、選手たちの今後の頑張りに期待したい。(編集委員)
◆藤山 健二(ふじやま・けんじ)1960年、埼玉県生まれ。早大卒。スポーツ記者歴34年。五輪取材は夏冬合わせて7度、世界陸上やゴルフのマスターズ、全英オープンなど、ほとんどの競技を網羅。ミステリー大好きで、趣味が高じて「富士山の身代金」(95年刊)など自分で執筆も。
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