追い抜き娘強さの秘密…意識の変化、妥協なき強化が生んだ“世界一美しい隊列”

2018年02月22日 09:30

スピードスケート

追い抜き娘強さの秘密…意識の変化、妥協なき強化が生んだ“世界一美しい隊列”
スピードスケートの日本代表を支える科学スタッフの紅楳氏 Photo By スポニチ
 【平昌冬季五輪 スピードスケート女子団体追い抜き ( 2018年2月21日 )】 メダルゼロの惨敗に終わった14年ソチ五輪。日本スケート連盟はその春、ナショナルチームを発足させて改革に乗り出した。所属の垣根を越えてトップ選手を集め、オフシーズンも合宿を行うなど、年間を通じて強化を続けた。さらにオランダ人のデビッド・ヨハン氏を中長距離コーチとして招へい。個人種目優先の外国勢に対し、団体追い抜きに照準を定め、徹底的に強化した。
 中でも力を入れたのがデータ分析。活動拠点とする長野市のエムウエーブの天井には28台のカメラが設置されており、例えば先頭の選手が交代した際の速度変化も数値化できる。日本は先頭が交代時に大きく外に膨らむのが特徴だが、科学スタッフの紅楳(こうばい)英信氏はその理由について「空気抵抗が抑えられ、速度変化もそれほど起きない」と説明する。

 選手にも感覚ではなく、数字を示して納得させた。国立スポーツ科学センター(JISS)の風洞実験棟では、人工的に風を起こし、空気力学的に好ましい姿勢と有効な隊列を研究。実際に隊列をつくり、横や縦にズレたりして空気抵抗の情報を収集した。前の選手と横に40センチズレた場合、1人で滑る時と同じ空気抵抗となることなどを選手に説明。選手同士の間隔は1メートル以内が理想的だ。「1メートル20〜30に変わると空気抵抗が全然違います」と紅楳氏は言う。

 こうした環境の中で高木美は一気に才能を開花させた。「サポートの質が上がり、自分の意識も変わった。トップレベルの中で質の高い練習ができるのも自分をどんどん高めていく時間になった」。意識の変化と妥協を許さない強化が生んだ世界一美しい隊列。紅楳氏は「スピードスケートは速いスピードを出すのではなく、早くゴールする競技。そのことを選手自身が自覚することが大事だと思っている」と力を込めた。

おすすめテーマ

2018年02月22日のニュース

特集

スポーツのランキング

【楽天】オススメアイテム