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宇野昌磨と「ステファン」コーチ 固い絆を垣間見た涙の夜

2024年05月15日 10:45

フィギュアスケート

宇野昌磨と「ステファン」コーチ 固い絆を垣間見た涙の夜
宇野昌磨とランビエル・コーチ Photo By スポニチ
 「グ…モーニン…」。いつもさわかやなステファン・ランビエル・コーチのあいさつが、力のない口調だった。宇野昌磨を指導する同コーチは、スターバックスのカップを片手にとても眠そうな様子で「Disappointed…(残念)」。聞くところによれば、前夜は夜通し泣いていたという…。
 23年11月に大阪・東和薬品ラクタブドームで行われたGPシリーズNHK杯。宇野はフリーで好演しながら結果は2位。順位ではなく、会心の演技をした自身の感覚とかけ離れた実際の得点のギャップに不満を見せた宇野は「これが基準になるなら、これが僕の限界。これ以上、僕に先はないなと思わされる試合だった」などと率直な思いを吐露した。

 その思いはランビエル・コーチも同じ。フリーの演技を終えた帰りのタクシーでランビエル・コーチは涙ながらに「昌磨の演技が評価されなかったことが悲しい」と打ち明け「(出場権を獲得した)GPファイナルには出なくていい」とまで言った。ホテルの自室に戻っても、涙は止まらなかったという。そこまで愛弟子に魅せられ、寄り添っていた。

 ここ数年、モチベーションを失いかけた宇野が奮い立ち続けられたのは、ランビエル・コーチをはじめ自身を信じてくれる陣営がいたから。宇野は試合ごとに「ステファンや周囲の人のため」とコメントを発した。14日の引退会見で宇野は印象に残る試合について「世界選手権で初めて優勝した後のステファンの喜んでいる姿は自分にとっても鮮明に記憶に残る思い出」と語った。

 その22年世界選手権モンペリエ大会。ランビエル・コーチは自身と同じ世界の頂点に立った宇野との関係について、こう表現していた。「テレパシーがあるか分からないけど、言葉を超えたものがあると思う」――。世界選手権の連覇者同士にしか分からない崇高な絆は、宇野の今後に大きな意味を持つに違いない。
(記者コラム・大和 弘明)

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