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「運動」で腸内環境を整えるには?おすすめの種目、トレーニング頻度

2024年05月15日 09:00

「運動」で腸内環境を整えるには?おすすめの種目、トレーニング頻度
運動をしていない人と、している人の腸内環境にはどんな違いがあるのでしょうか。 実は、運動が習慣化している人には、腸内細菌…

運動をしていない人と、している人の腸内環境にはどんな違いがあるのでしょうか。

実は、運動が習慣化している人には、腸内細菌に特徴があるといいます。その特徴とは、カラダに良い影響を及ぼす “有用菌 “ の割合が多いということ。

運動を習慣化することは、カラダに良い影響を与えることが分かっている一方で、過去の研究からは、負荷が高すぎる運動は腸内環境に悪影響を及ぼす可能性があるというデータも。

では、腸内環境を良好に保つためにはどのくらいの頻度で運動をしたらよいのでしょうか。腸内環境と運動負荷の関係と、腸内環境を整える適切な運動頻度とは。

運動と腸内環境の関係性について、腸内フローラ検査「マイキンソー(Mykinso)」を開発した株式会社サイキンソー取締役副社長/co-CEO 竹田綾さんに伺いました。

運動習慣がある人とない人では、腸内細菌にどんな違いがある?

健康的な腸内環境を維持するためには、いろいろな機能を持つさまざまな種類の菌がバランス良く存在する “ 多様性 ” を高く保つことが重要と考えられていますが、運動習慣がある人とない人では、この多様性に違いがあります。

定期的に運動をしている人は、腸内細菌の多様性と、腸内フローラ判定の値が高い

マイキンソーデータベース※1 からは、定期的な運動習慣がある人の腸内環境は、そうでない人よりも腸内細菌の多様性が高く、腸内フローラを構成する各菌のバランスから腸内環境の良し悪しを総合的にスコア化・判定した腸内フローラ判定の値も高い(良い)ことも分かっています。

また、運動習慣のある人はそうでない人よりも、カラダによい影響を及ぼす有用菌を多く持っていることも判明しています。

運動習慣のある人に多い菌として特徴的な、以下の4つを多く保有していました。

  • Butyricicoccus(ブチリシコッカス)
  • Lachnospira(ラクノスピラ)
  • Roseburia(ロゼブリア)
  • Monoglobus(モノグロバス)

中でもブチリコッカスは、腸の粘液成分であるムチンを介して増殖し、腸の上皮細胞の近くで、肥満予防や免疫を整える効果がある ” 酪酸(らくさん) “ を産生している可能性があり、お腹の健康に役に立っている可能性が高いとされています。

定期的に運動をしている人は、良好な腸内環境を維持しやすい

このようなデータからも、定期的な運動習慣がある人の方が良好な腸内環境を維持できる可能性が高いことが分かります。

まずは無理のない範囲でカラダを動かすことから始め、運動習慣が身についてきたら、少しずつ頻度を上げられないか工夫をしてみると、腸内環境も良好に保てる可能性が高くなるかもしれませんね。

※1:腸内フローラ検査「マイキンソー(Mykinso)」などを通じて収集した、国内最大規模の 10 万人強の腸内フローラと生活習慣のデータベース 。

【マイキンソー】腸内フローラ検査やってみた!面白すぎる結果が…!

腸内環境と運動負荷の関係。激しすぎる運動は腸内環境悪化の原因に?

一方で、負荷が高すぎる運動は腸内環境を悪化させてしまう恐れがあることも指摘されています。

実際にアスリートの 10~20 %が、胃腸の痛みや腹部膨満感、下痢などの消化器症状に悩んでいるともいわれています。※2

アスリートに腸内環境に関する研究を行ったところ……

順天堂大学がウルトラマラソンの日本人ランナーを対象に行った腸内フローラに関する研究 ※3 では、非常に負荷の大きい運動は腸内の酪酸産生菌を減少させ、免疫機能に影響を及ぼす可能性があることを見出しました。

また、摂南大学ラグビー部を対象とした一般健常人との腸内環境比較研究 ※4 においては、下痢の原因となるコハク酸濃度が高く、大腸炎患者レベルに達している選手がいたことや、研究に参加したラグビー部員の 87人中22人が、酪酸が検出限界以下であった(非常に少なかった)ことが報告されています。

激しい練習による体力の消耗も関係している

試合結果やパフォーマンスを追及するうえでの過度な緊張状態、海外遠征など普段と異なる環境での生活が、腸内環境を悪化させる主な要因と考えられていますが、激しい運動やトレーニングに伴う体力の消耗も要因の一つとされています。

一般の方が適度な運動をすることは、腸内環境を良好に保つためにも非常に有効であると思いますが、過度な負荷をかけた運動を行ったり、負荷の高い運動を長時間行ったりすることは腸内環境を悪化させる恐れがあるため注意しましょう。

※2:Systematic review: exercise-induced gastrointestinal syndrome-implications for health and intestinal disease

※3:Alterations in intestinal microbiota in ultramarathon runners

※4:Altered Fecal Microbiotas and Organic Acid Concentrations Indicate Possible Gut Dysbiosis in University Rugby Players: An Observational Study

どのくらい運動をすればいい?適切な頻度

適度な運動が良好な腸内環境を保つことに役立つということはお分かりいただけたと思いますが、一方で運動負荷が高すぎると、酪酸産生菌などカラダによい影響を及ぼす菌の割合が少なくなることも、過去の研究から指摘されています。

腸内環境を良好に保つための推奨運動時間をお伝えするのは難しいですが、WHO(世界保健機関)が2020年に発表した、身体活動・座位行動に関するガイドライン ※5では、成人がさまざまな健康効果を得るためには、日常生活の中で行う階段の上り下りやウォーキング、サイクリングなどの中強度の有酸素運動なら少なくとも週に150分~300分、力仕事やジョギング、水泳など高強度の有酸素運動なら少なくとも週に75~150分の身体活動が必要であるとしています。

中強度の有酸素運動(日常生活における階段の上り下り、ウォーキング、サイクリングなど)

⇒週に150分~300分

高強度の有酸素運動(力仕事やジョギング、水泳など)

⇒週に75~150分

エレベーターではなく階段を使うことや、最寄り駅の一駅前で降りて、いつもより少し長めに歩いてみるなど、通勤や家事の合間など日常生活の中で、10分~20分程度こまめにカラダを動かす意識をもつことから始められるといいですね。

負荷の高い運動を連続して行う人は、腸活を意識した食生活を

また、さまざまな事情で負荷の高い運動を連続して行う機会があるときは、腸内環境がダメージを受けてしまう可能性が高いことも認識しておきましょう。

いつもより少し腸活を意識した食事を摂ってみたり、プロバイオティクスサプリメントなどから酪酸産生菌を補ったりするなど、ご自身の腸を労わってあげてくださいね。

※5:WHO身体活動・座位行動ガイドライン(要約版)

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監修・執筆者プロフィール

株式会社サイキンソー 取締役副社長 執行役員 co-CEO 
竹田綾(たけだ・あや)

高校卒業後に渡米し、フロリダ州立大学で分子生物物理学の博士号を取得。帰国後、DNA解析受託サービスを行う企業にて、企業・アカデミア向けにコンサル営業を主に担当。出産を期に「食と健康」に興味を持ち腸内細菌叢の可能性に魅せられ、第二子出産後すぐに、腸内フローラ検査「マイキンソー(Mykinso)」を手がけるサイキンソーを共同創業。CSOとしてサイエンス領域の統括や研究受託サービスなどを推進した後、2024年1月に取締役副社長に就任。プライベートでは小学5年生と3年生の2児の母であり、子育てと3匹の猫の世話に奮闘中。

<Edit:編集部>

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