バルセロナ観光が一転、1000キロ10時間ドライブで全仏勝利
2018年05月29日 07:20
テニス
ところが日曜日にコーチから連絡が入り、補欠の1番手になっていることを知った。元々、トルンゲリティは補欠リストの3人目。1人目がまずラッキールーザーとして本戦に入り、2人目はすでに下部大会に出場してしまっていた。キリオス(オーストラリア)の欠場がほぼ決まっており、会場で登録さえ済ませればラッキールーザーとして繰り上げ出場できる状況だった。
「5分で決めた。あっという間だったよ」。ストライキの影響があって飛行機や電車で行くのは確実ではない。家族に了解を取り、レンタカーの行き先はパリへと変更された。小さな車にトルンゲリティと彼の妻、彼の弟、そして祖母の4人を乗せ、日曜日の午後1時、長いドライブが始まった。
「アルゼンチンではブエノスアイレスにでも住んでなければ、1000キロも何もないのは当たり前。だから俺たちには大したことじゃなかった」と弟と交代で運転し、2時間ごとに休憩も取った。「高速道路もあったからバッチリだよ。アルゼンチンにもあるけど、1車線しかなくて対向車が向かってくるんだ。2時間もドライブしたら生きていられるか分かんないよ」
バルセロナからパリへ。1000キロの道のりを10時間かけて走破下のは、もう日付も変わろうかという時刻だった。5時間だけ睡眠を取って、午前7時半には会場で出場登録完了。トミック(オーストラリア)との1回戦は午前11時からに迫っていた。
「精神的には準備はできていた。肉体的にはどうだったか分からないな」。しかし試合が始まれば68本もの決定打を浴びせ、6―4、5―7、6―4、6―4。2時間54分を戦い抜いて、3年連続の全仏2回戦進出を決めた。
ラッキールーザーによる幸運の物語。試合後はトルンゲリティ本人だけでなく、家族も取材を受けるなど、ちょっとしたフィーバーとなった。「まさかこんなことになるなんて…」。そう、数日前には誰も想像していなかった。 (パリ・雨宮 圭吾)
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