スタート時間を早めてもまだ難問山積みの東京五輪マラソン
2018年11月29日 10:00
マラソン
以前、有森裕子さんに早朝レースの時の様子を聞いたことがある。銅メダルを獲得した1996年7月28日のアトランタ五輪女子マラソンは午前7時スタートで、暑さはもちろん、90%近い湿度にも苦しめられた。有森さんによると、7時スタートに合わせて朝食をとったのは4時間前の午前3時だったという。42・195キロを走り抜くだけのエネルギーを補給するため、朝食は炭水化物が中心。実際に口にしたのは「おにぎり2個(梅干し入り)」と「餅が2つ入った味噌汁」、それに「カステラ一切れ」と「オレンジジュース」だった。午前3時にこれだけのものを食べるのは、いくら選手でも大変だ。もしスタートが5時半になれば1時半には炭水化物をたっぷり食べなくてはならず、慣れるまでには相当の準備期間が必要だろう。
それでも選手はまだいい。すべては自分のためだし、メダルのためなら誰でも労は惜しまない。だが、レースを支えるスタッフはもっと大変だ。スタート時間が早まれば早まるほど、始発電車に乗っても現場に間に合わない公算が大きくなるからだ。マラソンレースを開催するには選手以外にも公式役員、交通整理や誘導係など膨大な数のスタッフが必要になる。しかもマラソンは競技場内だけではなく、42キロのコースに絶え間なくスタッフが配置される。そのすべての人たちが、少なくともスタートの1時間前には配置についていなくてはならない。
近くに前泊しようにも五輪期間中の宿泊施設はどこも満室で、そもそもそんな予算はない。この人たちをどうやって電車も走っていない時間に持ち場につけるようにするのか。なかなかスタート時間を早めることができなかった理由の一つがここにある。
暑さだけではない東京五輪のマラソン問題。スタートの号砲が鳴るまでにはまだまだ紆余曲折がありそうだ。(編集委員)
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