関学日本一!悪質タックル被害乗り越え、奥野MVP2冠
2018年12月17日 05:30
アメフト
「素直にうれしい。いいことも悪いこともあった大変な一年だけど、いろいろ経験できた」
ミルズ杯&甲子園ボウルMVPの2冠。悪夢を乗り越えた先に、学生フットボーラーの頂点があった。
今年5月6日、日大との定期戦で受けたタックルが「悪質」として日本中の話題となった。自身は脚にしびれが出て約3週間、練習を休んだ。その間には心労から「アメフットをしなければ良かった」と家族の前で涙も流した。周囲の励ましで、5月27日には練習試合に復帰。競技と真剣に向き合う時間の積み重ねが、この日につながっていた。
その証が、腕に記した「34」の数字だ。負傷を抱える4年生RB山口から腕に書いてもらった。先輩の背番号とともにフィールドに立ち「ここまで助けてもらった。一緒に出る」と気合を入れ、躍動した。
初めて立つ聖地の舞台で、背番号3は物おじしなかった。最初のプレーでWR阿部に11ヤードパスをヒット。試合の流れを決める先制TDの道筋をつけ、切れ味鋭いスクランブルのランが何度も早大の意表をついた。「相手のLBが下がっていたので、うまく走ってゲインできた」。甲子園ボウル出場を決めた立命大とのプレーオフ(2日)。強引にパスを通そうとして、3度のインターセプトを許した。同じ過ちを犯す司令塔ではない。ベンチを、仲間を信じ、着実にドライブを進めた。
表彰式の後、奥野が口にした言葉に実感がこもった。「しんどい時もあったけど、周りに助けてもらった。一人では精神的に立ち直れない部分もあったし…」。悪質タックル事件では、繰り返し流される暴挙の映像に胸が痛み、競技を続ける意思も揺らいだ。奥野の才能と人柄を認め、再起を期待した鳥内秀晃監督や光藤主将らスタッフ、選手の声がどれだけ勇気づけたか――。「波瀾(はらん)万丈。人生でこんな経験をすることはない。勉強になった一年」と奥野。チームメート、そしてアメフットから愛された男が、最後は18年の主役となった。
▼悪質タックル問題 今年5月6日、都内で行われた関学大と日大の定期戦で、日大のDL(ディフェンスライン)がプレー終了後の関学大QBにタックル。QBは負傷した。その後も反則を繰り返したDLは退場処分に。事態を問題視した関東学連が調査を命じた。一方で日大側の調査は選手の責任とするばかりで、謝罪にも誠意がないとし、関学大QBの父は被害届を提出する事態に。タックルを行った日大選手は5月22日に会見を行い、指導者から指示があったことを明言。日大の監督、コーチは否定する会見を行ったが、両者ともに懲戒解雇された。なお、日大は今季、公式戦出場ができなかった。
◆奥野 耕世(おくの・こうせい)1998年(平10)6月20日生まれ、大阪府池田市出身の20歳。小1の時、「池田ワイルドボアーズ」でタッチフットボールを始め、北豊島中ではバスケ部に所属しながら、アメフットを続ける。関学高では2年時に全国制覇。ポジションは一貫してQB。1メートル71、75キロ。
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