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引退危機から近鉄へ―ラグビー界のエリート街道歩んだ正面健司の“最後の仕事”

2019年06月01日 10:00

ラグビー

引退危機から近鉄へ―ラグビー界のエリート街道歩んだ正面健司の“最後の仕事”
ラグビーの近鉄に新加入したSO/FB正面健司 Photo By スポニチ
 加入して、いきなりチームの日本出身選手最年長である。求められることは百も承知。勝つチームは何が違うのかを伝えなければならない。東海大仰星―同大―トヨタ自動車―神戸製鋼。ラグビー界のエリート街道を歩んだ正面健司(36)の新しい仕事だ。いや、年齢を考えれば、最後の仕事になるかもしれない。4月から下部リーグの近鉄に加入した。
 「神戸(製鋼)での最後の3年ぐらいはラグビーの楽しさが分からなくなっていた。今はやっていて楽しい。僕が持っている知識を落とし込めばチームが良くなるのでは、という伸びしろがすごく見えています」

 実は引退危機だった。昨季で神戸製鋼との契約が切れた。その後、どのチームからもオファーが届かなかった。ひっそり消えていくことを覚悟した。

 「現役続行と言いながら、引退したら“はずい(恥ずかしい)”なと思いながら、それでもいいかなって思っていました。それが近鉄に声をかけてもらって、またラグビーをやりたいと思えました」

 弾んだ声が充実している証拠。もともとよくしゃべる男である。ユーモアセンスもある。だが、人の気持ちや自分の立場を考え過ぎるあまり、発言を控えることも多い。SO、FBをメインとし、WTBもできる日本代表2キャップは、神戸製鋼での晩年、外国勢の壁に阻まれ出場機会が激減していた。15季ぶりVに沸いた昨季も蚊帳の外だった。それに比例し、報道陣に対して、持ち前のトーク力が影を潜めていた。

 新天地ではつらつとしている。来季のトップリーグ昇格を狙う古豪では、主にFBで練習している。36歳は元気いっぱいだ。
 「できる感覚はありますよ。もともと走れないので、衰えた感覚がありません」

 チームの寮で夕食を食べて帰ることが多い。昭和58年生まれは、平成生まれと食卓を囲み、「平成の名曲というのがテレビでやっていて、みんなKANを知らなかったんですよ」とジェネレーションギャップを感じつつも、アドバイスを送り、日々にやりがいを感じている。6月1日にNTTドコモと今季初の練習試合を迎える。
 優れた判断力、パス技術、ランニング能力を備えるゲームメイカーは、タックラーの顔も持ち合わせている。神鋼時代、ターンオーバーにつながる「インパクトタックル」を何度も決めた。取材に訪れた5月28日、全体練習が終わると、雨の中、真っ先に取り組んだのはタックル練習だった。クールでひょうひょうとしているが、骨っぽい。正面健司は健在だ。(倉世古 洋平)

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