追悼連載~「コービー激動の41年」その78 まさかの負傷で始まる引退への序章
2020年05月04日 08:08
バスケット
すでに32歳となっていたブライアントの肉体にも“異変”が生じ、陸上のウサイン・ボルト(ジャマイカ)も行っていた多血小板血漿(PRP)治療を膝と足首に受けるようになっていた。患者自身の血液から血漿を取り出してそれで組織を再生させるという最新治療。十代から宙を舞い続けた脚力にも翳りが出始めていた。
レイカーズの監督はこのあとマイク・ブラウン→マイク・ダントーニ(現ロケッツ監督)→バイロン・スコットと代わっていくが、現在に至るまで優勝は飾っていない。第27代の指揮官となったフランク・ボーゲルが就任した今季は残り19試合となった段階で西地区全体の首位(49勝14敗)にいるが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で3月中旬からレギュラーシーズンは中断。ブライアントが歓喜した2010年以来の頂点に再び立てるかは不透明だ。
5度のファイナル制覇という栄光を勝ち取ったブライアントは選手生活の晩年で“悪夢”のようなケガと直面する。それは2013年4月12日に地元ロサンゼルスで行われたウォリアーズ戦での出来事だった。
レギュラーシーズンの残りは3試合でどちらもプレーオフ進出のために必死となっていた試合。ブライアントは3分休んだだけの45分も出場して34得点を挙げ、118―116での勝利に貢献した。ただし最後までコートにいたわけではなかった。
第4クオーターの残り3分6秒。ブライアントは正面やや左の位置からウォリアーズのハリソン・バーンズ(2019年W杯米国代表=現キングス)との1対1で勝負に出た。一瞬、バーンズに背中を見せたあと時計回りにスピン。そのままインサイドに突っ込んでレイアップにもっていく…はずだった。ところが2歩目を踏み出したところでバーンズと接触。そのままうずくまって左のかかと付近を両手でもみほぐす姿をアリーナにいた1万8997人のファンは目撃する。
パウ・ガソルの右手を借りて立ち上がったのは倒れてから17秒後。反則で得たフリースローは2本決めたが、プレーを続けるのは無理だった。フリースローの成功だったために試合は止まらず、ウォリアーズがスローインでボールをコートに入れたあと、レイカーズのスティーブ・ブレイクが意図的に反則を犯して時間を止めた。そして足をひきずる背番号24を、ベンチにいた控えセンターのロバート・サクレ(元サンロッカーズ渋谷)とゲイリー・ビッティ・トレーナーが支えてロッカールームに引き揚げた。
「何万回もやってきたプレーだった。でもちょっと浮いてしまった。脚がちぎれたような感じで、歩こうとしたが無理だった」
すぐにアキレス腱の断裂が判明。試合後、メディアから「ハードな練習が災いしたのでは?」と質問されたブライアントは「それはすべて必要なことだった。関係はない。これは特別なシチュエーションだ」と否定した。
ここから長い道のりが始まる。ある意味、それは引退への序章となったのだが本人はそんなことは知らない。人一倍の努力を“自分の日常”と位置づけていた男はそれでも復帰を信じて頑張り続けた。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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