追悼連載~「コービー激動の41年」その82 現役最後の試合で対戦したのはジャズ
2020年05月08日 08:00
バスケット
ベンチから出たのは4人。実はここにとても興味深い選手が2人いる。1人目はクリス・ジョンソン。198センチのスモールフォワードで当時27歳。レイカーズ戦では20分出場して7得点だった。とくに個人成績的に際立ったものではないが、実は大きな貢献をしていた。
ジャズの先発5人は出場時間帯で誰1人、チームのスコア(得失点差)をプラスにできなかった。4得点に終わったフッドにいたっては18分間でマイナス18。ほとんどチームに貢献できなかった。ところがジョンソンはプラス19。第4クオーターの残り2分36秒、ジャズが記録したこの日最後の得点(96点目)はジョンソンがゴール下で決めたシュートだった。ある意味、彼の攻守にわたる献身的なプレーがこの試合を演出したと言ってもいい。
もう1人は29分間にわたってコートにいたトレバー・ブッカー(当時28歳)。北米プロスポーツ界に身を置く選手としてはとてもユニークだ。198センチというサイズはジョンソンと同じでレイカーズ戦では8得点。それより彼に関しては“未来”についての方が語るべき部分が多い。2018年のペイサーズを最後に現役からは退いたが、彼の特徴はコートの外での部分。実はバスケットボールの選手でありながら、クレムゾン大時代からビジネスで手腕を発揮していた。
ブッカーは同じく商才に長けたルームメートとともにバスケのアカデミー(クリニック)を複数主宰。今ではそれが6つの私立学校に生まれ代わり、これが財を生み出した。不動産投資でも成功。一戸建てから商業棟まで幅広く物件を手掛け、プエルトリコのリゾート地に別荘も購入。それを売却するとサッカーチームを買収し、自然にやさしいエコ・シャンプーを売ってさらに事業を拡大させた。すでに12社の経営に関わっており、「あと30年でビリオネア(億万長者)になりたい」と将来の夢を語っていた起業家だった。
さてそのジャズは前半で57―42とリードしていた。3クオーター終了時点でも9点をリード。まさかここからドラマが始まろうとは夢にも思わなかっただろう。ブライアントは試合開始から5本連続でフィールドゴール(FG)を失敗。現役最後の試合にふさわしい?衰えを感じさせるような滑り出しだった。レイカーズの先発陣はブライアント以外にディアンジェロ・ラッセル(現ウォリアーズ)、ジョーダン・クラークソン(現ジャズ)、ロイ・ヒバート(2017年に引退)、ジュリアス・ランドル(現ニックス)の4人。つまり両軍の先発陣で今季も同じチームに所属している選手は誰もいない。移籍が当たり前のNBAではあるが、時の流れが早すぎるような気もする。
さてブライアントは開始早々は精彩を欠いたが、6分48秒に初のシュートを決めてスイッチが入る。このクオーターだけで15得点。第3クオーター終了時点ではすでに37得点に達していた。そして驚がくの第4クオーターが始まる。コートにいたのは間違いなく“バスケの神”だった。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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