ラグビー山中亮平の手 素手のこだわりから生まれる剛柔自在のプレー
2020年10月14日 12:10
ラグビー
「普通の手ですよ。父親は指が太くてデカかったんですけど」
2年前にFBに転向したとはいえ、1メートル88の長身にして、柔らかい身のこなしで、東海大仰星高と早大を日本一に導いた司令塔である。センスの塊らしく、繊細さがあふれていた。
キャッチやパスの精度を左右する指先の感覚を大切にする。滑り止めは「ちょっと塗るぐらい」。量が多いと、タッチキックやハイパントを蹴る際に、ボールを離すタイミングが微妙に狂うからだ。普段の練習から、試合と同じ量を塗る。
ノックオン防止のための指先のテーピングも巻かない。「ボールを生で触る感覚を大事にしているので」。大学まではグルっと白いもので覆っていたが、「スーパーラグビーを見て、海外の本当のトップはまかないんだと思って、それでやめました」と、神戸製鋼に入るのを機に、素手にした。
社会人では、華やかだった大学までと違い、波瀾万丈だった。苦労じわが手のひらにできるとしたら、その両手はしわくちゃになっていただろう。
スポットライトから遠ざかったが、その代わりに、泥臭いプレーと体を張るプレーが芽生えた。FBへのポジション転向も転機になり、昨年は念願のW杯に初出場。全5試合でピッチに立った。2019年10月13日、初の8強が決まったスコットランド戦は、試合終了のホーンが響くと、左足で大きく外に蹴り出し、試合を終わらせた。あれから1年。W杯で得た自信は計り知れない。32歳はいい味を出し始めたところだ。(記者コラム・倉世古 洋平)
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