“悔しい思い”を胸に 垣永真之介から感じる熱いだけではない男の深み
2021年05月26日 08:30
ラグビー
「国立最後の早明戦」と銘打たれた13年12月1日の試合後には、松任谷由実が歌う「ノーサイド」を聞きながら、はばかることなく号泣した熱血漢。かと思えば冒頭のような軽口で場を和ませる。16年、サンウルブズ初年度の沖縄キャンプでは、各選手がそれぞれ作成した自己紹介ビデオで、初体験の日時、さらに2回目…と克明に告白。外国人選手のために付いていた女性通訳を困らせたという。ちなみに大ウケ、とはいかず、ややウケ。そんなところも、今季もスクラム前の咆哮で周りの選手に無視され続けた垣永らしい。
24日に発表された今春の日本代表スコッドに、5年ぶりに名を連ねた。14年春の代表活動に招集されながらも出場機会は訪れず、初キャップ獲得は同年11月のジョージア戦。翌15年はW杯代表入りを目指して4月から代表合宿に参加し続けたが、8月31日に発表された最終登録メンバー31人にその名はなかった。代表ジャージーを着たのは16年6月のスコットランド戦が最後。膝のケガもあり、同年のトップリーグには1試合も出られなかったが、翌シーズンには復帰し、3番に定着して久しい。今季も23日の決勝を含む8試合に先発。初のベストフィフティーンにも選ばれ、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチの下で5年ぶりのキャップ獲得を目指す。
決勝のパナソニック戦はやや劣勢に映ったスクラムだが、コロナ禍の長い長いプレシーズン、地道に強化に励んだという。今季はジャッカルも光った。2年ぶりの代表活動が行われる今年は、W杯の中間年でもある。19年W杯経験者でもなく、若手でもない29歳の垣永が招集されたのは、純粋に今季のパフォーマンスを評価されたからと言っていい。「トップリーガーになって2大会(W杯に)出られずに悔しい思いをしているので、チャンスがあるならば、しっかりプランニングしてやっていく」。一途な思いを語りつつ、「プランニング」というワードを使っているところに、熱いだけではない男の深みを感じる。
左右プロップが3人ずつ選ばれた。ライバルは具智元、ヴァル・アサエリ愛、そして今回は落選した数多の大男たち。23年W杯まで、残された時間は決して長くはなく、短くもない。究極の無酸素運動と呼ばれる陸上の400メートル走のような、濃密な戦いの号砲が鳴る。(阿部 令)
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