21年の成績だけで振り分けるのが、ラグビー新リーグ初年度の最適解ではなかったか
2021年07月17日 08:00
ラグビー
今年のトップチャレンジリーグで1位になりながら、3部に振り分けられた豊田自動織機シャトルズ愛知の公式ウェブサイトには、大武憲生部長名で無念さがにじむ声明文が早速掲出された。その中には「今回のグループ分けは、新リーグに向けて各チームの強化方針、事業化方針等の準備状況が審査され、昨シーズンの成績が与える影響は限定的だったとの説明を協会から受けました」との一文がある。審査項目は審査開始前の段階で各チームにしっかり示されていたはず。それなのにあたかも結果報告の場面で初耳であったような表現が用いられ、納得しがたい思いがにじみ出ているのは、当事者ですら分かりづらい審査項目や評価基準が原因のように思う。
いまさら何を主張しても後の祭りだが、やはり新リーグ法人準備室や審査委員会、引いては日本協会は、審査項目や評価基準を、少なくとも最終結果発表の段階で、公にするべく各チームの同意を得るべきだった。特に評価基準の不明瞭さが、今回2部以下になった各チームの努力の方向性を見誤らせた面があるのではないか。昨年末に審査委員会が各チームに中間順位を通達した際、1部の当落線付近にあった複数のチームが、日本協会に上申書を提出したり、通達を行った谷口氏に言葉を荒らげたと聞く。厳正な審査が外的要素でねじ曲げられるようなことはあってはならないが、一方で混乱を招いた要因は、やはり審査委員会など3者にあるだろう。
審査委員会が最終報告した審査順位が、21年シーズン成績の点数化を修正したことにより、1部と2部、つまり12位と13位のチームが入れ替わる事態も生じた。取材により極めて確度ある情報を得ているが、あえてチーム名を伏せれば、2部になったのはトップチャレンジリーグで上位成績を収めたチームであり、1部になったのは各国代表のレジェンドレベルが名を連ねたほどの豊富な戦力を誇り、最後のTLでも4強以上の成績を残したチームだ。
もし、審査委員会の最終報告を協会が承認して最終結果となっていたら、それはそれで日本ラグビー界に激震が走るほどのニュースになっていたはずだ。だからこそ、まるでそのチームが何らかの圧力をかけたり、日本協会が忖度(そんたく)して審査委員会の結論を恣意(しい)的に変更したような印象が多少なりとも漂っていることが残念だし、防げたことだと感じる。全ては審査の不透明性が原因だろう。
各チームが親会社から経済的に独立し、リーグと一体となって稼ぐことでラグビー界全体で共栄共存していくために、単純にTLから4チームをふるい落とすだけのマイナーチェンジにとどめずに新リーグを立ち上げた目的と理解している。一方で少なくともフェーズ1と呼ばれる当初の3シーズンは、純粋な競技力だけで各ディビジョン間の入れ替え戦を実施することも正式に発表された。どれだけ事業性に優れ、立派なスタジアムを確保して今回1部に振り分けられても、わずか1シーズンで2部に降格する可能性があるということ。それならばなおさら、競技性以外の一切の参入条件を満たしたチームを、競技力=21年の成績だけで振り分けるのが最適解ではなかったか。もちろんこの主張も、後の祭りである。
14日の理事会後ブリーフィングで池口氏が「戦績部分は(メディアやファンが)想像しているよりも、全体の配分の中でさほど大きくないと思う」と語ったことを起点として、改めて取材を進めてみると、小紙も全体の1割程度と見ていた21年のTL成績による評点は、実際にはその半分以下だったようだ。そこまで競技成績を“軽視”する配点を定めた理由も、私個人として納得できないし、豊田自動織機も納得できないのであろう。
何度も書くが、全ては後の祭りだ。この期に及んでは日本協会、新リーグ法人、24チームがどうにかONE TEAMとなり、半年後の開幕へ失地挽回し、とにかくリーグが盛り上がることを願うばかり。きれい事で筆を置くが、それがラグビーを愛する人たちの願いではないだろうか。(記者コラム・阿部 令)
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