不屈の男 パラ馬術代表・高嶋活士 ここが夢の“G1舞台”
2021年08月17日 05:30
馬術
以前はJRA騎手として競走馬を操っていた。11年にJRAデビュー。1年目は平地をメーンにしていたが、2年目から障害レースにも出場した。最初は嫌々だったというが、「空を飛んでいる感覚が気持ち良く、そこから本当にはまりました。あのアドレナリンが出る感じが良かったんです」と振り返る。
その障害レースで起きた事故が原因でパラリンピックの道へ足を踏み入れた。13年2月の障害レース中に乗っていた馬が障害を越えるときに落馬。脳の3カ所から出血する大けがを負った。低体温治療で丸1週間意識がなく、覚醒しても自分が美浦から電車で競馬場に行ったのか、車で行ったのかも覚えていなかった。
「前日からの記憶がなかったんです。ちょっと調べたら事故の話が出てきた。乗ってた馬も跳び方が危うい馬だった。まぁ仕方なかった…」 医師からはリハビリをすれば騎手に復帰できると言われ、リハビリ専門病院などで集中的に取り組んだ。まずは乗馬から始めたが、競走馬を制御できるまでには回復することはできなかったという。
「これは危ないな。ほかの馬にも影響が出る。これはさすがに駄目だなと」と15年に引退を決めた。
パラ馬術を始めたのはひょんなきっかけだった。引退する前の13年に20年の東京五輪・パラリンピック開催が決まった。ネットニュースで元JRA騎手の常石勝義さんがパラリンピックを目指すということを知った。最初はパラ馬術という競技があることすら知らなかったという。「パラスポーツってみんな車いすとかだと思っていて、そういう道もあるのかと。乗馬は乗れる感じだったので、そっちを目指すのも良いかな」。引退と同時に転向、ジョッキーのクセが抜けず馬術への移行は苦労したこともあったが「楽しいから続けよう」と地道な訓練が実を結んだ。
競馬学校時代の同期からも代表決定を祝う連絡が来た。嶋田純次(28)はレース前のインタビューで「(高嶋が)頑張っているから自分も頑張りたい」とコメントした。高嶋は「同期の藤懸貴志が重賞を制したり、みんな頑張っている」と刺激を受けたという。「現実的に見れば世界の層は分厚い」と冷静に分析するが「オランダの大会で65%が出せた。パラリンピックでは大台70%を目指す。それを出せば入賞も狙っていける。まずはそこが目標」と本番を見据えている。
〇…パラ馬術 馬場馬術(ドレッサージュ)種目のみを採用。決められた歩き方、常足(なみあし)速歩(はやあし)駈足(かけあし)や課題となる図形を描く正確さなどによって総合的な観点から10点満点で採点され、その合計の得点率で順位を競う。障害の程度によって5段階に分けられ最も重い障害のグレード1からグレード5まである。東京パラでは個人、団体など11種目が行われる。
◇高嶋 活士(たかしま・かつじ) 1992年(平4)12月2日生まれ、千葉県出身の28歳。JRA騎手として11年にデビュー。13年2月に落馬事故で右半身まひの障害を負い、15年に引退。パラ馬術に転向した。パラ馬術では2番目に障害の程度が軽い「グレード4」にクラス分けされている。家族は妻と娘2人。1メートル60、55
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