尽きぬ向上心こそ「ストイック」な宇野昌磨の原動力 トレーナーとして支える出水慎一さん

2022年03月09日 10:00

フィギュアスケート

尽きぬ向上心こそ「ストイック」な宇野昌磨の原動力 トレーナーとして支える出水慎一さん
宇野昌磨(右)と写真に収まる出水慎一さん(出水さん提供) Photo By 提供写真
 【五輪企画コラム「オリンピアンロードの歩き方」】五輪を目指すアスリートに影響を与えた恩師、愛情をたっぷりそそぐ両親らを取材するコラムの第3回。北京五輪のフィギュアスケート男子で銅メダルを獲得した宇野昌磨(24=トヨタ自動車)をトレーナーとして支える、出水慎一さん(43)の言葉から本人のストイックさに迫った。
 宇野という選手について、かつて指導した樋口美穂子コーチに聞くと「ストイック」という言葉が最初に返ってきた。幼少期には朝から晩まで滑り続けたほどの姿勢が今も変わっていないことは、出水さんの話を聞いて納得できた。

 17年からトレーナーとして支え、銀メダルを獲得した18年平昌五輪でも一緒に戦った出水さん。それからの4年間を「スケートに対する向き合い方が大きく変わった」という。「トップで争う選手になりたい」と本人が語った今季。これまで必死に取り組んできた氷上の練習を継続することはもちろん、より視野を広げた。

 「課題が出た時、以前ならスケートで改善していたのが、陸でもプラスアルファしていくという考え方になったのは初めて」と出水さん。昨年10月のスケートアメリカでは、フリーの後半で良い流れを持続できず、持久力や瞬発力に課題を感じた。宇野本人から出水さんに陸トレを願い出て、ダッシュ&ストップ&ダッシュを繰り返すトレーニングなどで強化を図った。

 練習方法はそれだけにとどまらず、足の親指と小指も鍛えた。出水さんが親指や小指を押さえ、それを宇野が押し返す。反対方向からも押し、それに反発する。地味な箇所でも、本人が必要性を感じたことからトレーニングに着手し「着地の際に支える力は確実に上がっている」と出水さんは言う。

 練習メニューが増えた一方で、減ったものもある。それが練習後のケア。以前なら45分~1時間程度を費やしていたのが、短い時には15分程度となった。それも、試合で結果を残すため。「練習の時はいつも疲労があって、その中でプログラムをノーミスで通したりする。でも、試合で完全に疲労が抜けている状態だとイメージが違うものになってしまう。疲労を残した体の状態にするように変えました」。これも宇野からの提案だった。

 さまざまな角度から自分と向き合い、手にした銅メダル。フリーの演技直後、本人は「帰って一刻も早く練習したい」と語った。この向上心こそが、ストイックな宇野昌磨の原動力なんだと思った。(五輪担当・西海康平)

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