「男女平等」は単純に「男女同数」で実現するものなのか IOCは改めて検証すべき

2022年06月17日 05:20

ノルディック複合

「男女平等」は単純に「男女同数」で実現するものなのか IOCは改めて検証すべき
北京五輪ノルディックスキー複合男子団体で銅メダルを獲得し、日の丸を掲げる(左から)渡部善斗、永井秀昭、渡部暁斗、山本涼太 Photo By 共同
 【ノルディックスキー複合 26年五輪除外危機 】 【記者の目】IOCは14年の「アジェンダ2020」で五輪ムーブメントの未来に向けた改革案を示し、その中で最重要課題の一つとして「男女平等の推進」を掲げた。以来、積極的に男女混合種目の導入を推し進め、昨夏の東京五輪では女子の比率が48・8%、次のパリ五輪では五輪史上初めて男女の数がほぼ同数になることになっている。その流れの中で、男子種目しか実施してこなかった複合が「除外」の対象になるのはある意味、自然の流れなのかもしれない。
 だが、IOCの狙いは恐らくそれだけではないだろう。近年、IOCは将来的な収益の拡大を目指し、若者に人気のスポーツを取り入れることに力を注いできた。昨夏の東京五輪でのスケートボードやサーフィンの盛り上がりは記憶に新しいが、大会のキャパシティーに限界がある以上、新しい種目を加えれば何か他の種目を除外しなくてはならない。対象となるのは欧米で人気が低く、放映権料やスポンサー収入が見込めない競技であり、それが今回は「複合」だったということなのではないか。

 複合はジャンプとクロスカントリーを同時にこなすという過酷な競技の特性から、他の競技に比べて女子の参加が進まなかったのは事実だ。しかしそれは男女の体力的な違いであって、「排除」や「差別」ではない。「男女平等」は単純に「男女同数」で実現するものなのか。人数制限を理由に長い歴史を持つ伝統種目を簡単に切り捨てることが真の五輪精神なのか。IOCは改めてもう一度検証すべきだろう。(編集委員・藤山健二)

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